見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

伝道と翻訳/横浜開港と宣教師(横浜開港資料館)

2009-02-25 17:37:17 | 行ったもの(美術館・見仏)
○横浜開港資料館 企画展示・開港150周年記念『横浜開港と宣教師-翻訳聖書の誕生-』(2009年1月28日~4月19日)

http://www.kaikou.city.yokohama.jp/

 横浜開港資料館の展示は、いつも期待以上に収穫が大きい。一見地味な資料の価値(面白さ)を、よく心得た人たちが作っているんだなあ、と感じる。今回の展示は、幕末以来、横浜に来日した宣教師たちの軌跡を、聖書の翻訳と出版事業を中心にたどったもの。加えて、東洋における伝道と聖書翻訳の歴史を、少し間口を広げて追いかけてもいる。

 世界最初の日本語訳聖書は、天保8年(1837)プロシア生まれのカール・ギュツラフが、日本人漂流民の助けを借り、マカオで翻訳し、シンガポールで刊行したものだ。意外と遅い登場だという感じがする。徳川幕府の禁教以前にはなかったのだろうか?と思って、Wikipediaを見たら、16~17世紀、イエズス会士による日本語訳が存在したらしい。しかし、これらは現存していない。したがって、会場で見ることができるのは「現存する」世界最初の日本語訳聖書である(東京神学大学蔵)。康煕綴じの線装本(和本)で、無罫の枠内に、広く行間をあけた細字のカタカナが並ぶ。展示はヘボンの旧蔵本で、表紙に自筆のメモが貼りつけてある。

 のち、ヘボンは宣教師仲間に呼びかけて聖書翻訳を開始し、明治5年(1872)その一部が刊行された。この事業は、各派の宣教師による共同翻訳に発展し、「明治元訳」と呼ばれる新約聖書が完成した(1874~80年刊)。「翻訳委員社中」の人々の顔写真を並べたポスター(展示品は複製)には、フルベッキの顔も見える。日本バプテスト横浜教会の初代牧師ネイサン・ブラウンもそのひとり。

 彼らが横浜に建立した教会や天主堂は、古写真にしか姿を留めないと思っていたが、当時の雑誌『ル・モンド・イリュストレ=Le Monde Illustre』や図書『カトリック宣教アルバム・東アジア編=Album des missions Catholiques. Asie orientale か?』(パリ、1888年)、あるいはイギリス国立公文書館のマイクロフィルムなどを丹念に探っていくと、いろいろな記録が見つかるようだ。ヘボンが宿舎とした成仏寺、アメリカ領事館だった本覚寺などの古写真も興味深い。今度、往時をしのんで神奈川宿周辺を歩いてみたい。西洋人の少年少女が連れ添った、聖書販売用リヤカーの写真も珍しかった。

 隣接する横浜海岸教会(今回の展示にも登場する宣教師、S. R. ブラウンが創建)の桜が咲く頃の風景も好きだ。あと1か月くらい先かな。

■館報「開港のひろば」:企画展について詳しい
http://www.kaikou.city.yokohama.jp/journal/index.html

■画像で見る聖書の歴史:日本語訳5点掲載
http://taijiro.tama.net/Kuni2Sato/gazou/gazou.cgi?page=15


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