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見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

浮世絵見て歩き/上野の森、千葉市美、慶応義塾

2025-07-16 22:30:12 | 行ったもの(美術館・見仏)

上野の森美術館 『五大浮世絵師展-歌麿、写楽、北斎、広重、国芳』(2025年5月27日~7月6日)

 大河ドラマ『べらぼう』の影響か、今年は浮世絵展が大流行りである。私は東京近郊の展覧会は全て見に行こうと決めている。この展覧会は、閉幕1週間前に出かけたら、ものすごい行列だったので、閉幕直前の土曜日に出直した。10時開館だったので、1時間は並ぶつもりで9時近くに到着したら、なんとすぐに開館して中に入れてくれた。館内は、五大浮世絵師のセクションがそれぞれ区切られている。最初の歌麿、写楽はもう観客でいっぱいだったので、先に北斎を見て、写楽に戻り、歌麿はお客さんの頭越しに眺め、2階に上がって、広重、国芳を見た。分量的には、歌麿、写楽は少なめ。絵師ごとにテーマカラーが決められているのが面白かった。歌麿:茶色、写楽:ピンク、北斎:青、広重:緑、国芳:赤、だったかな。

 歌麿は『契情三人酔(笑上戸)』がとてもよかった。腹立上戸、泣上戸と3枚組らしい。同輩に背中から抱きかかえられるようにして笑っている遊女の生き生きとした表情や仕草が愛らしい。ああ、遊女を人間として見ていたんだなあと感じさせる。北斎の風景画(東海道五十三次や富岳三十六景)はやっぱりいい。超有名作品でないものも普通にいい。広重の風景画は黒の使い方が巧みだと思った。一方で、初めて見た(?)広重の美人画にも惹かれた。遊里の風景を近江八景に見立てた『内と外姿八景 桟橋の秋月 九あけの妓はん』は、股火鉢ではないけれど、ぼんやり囲炉裏に向かって暖を取る遊女の姿を描いている。

 国芳はどれもいいのだけれど、この作品、久しぶりに見たな、というものが意外と多くて嬉しかった。地雷也や天竺徳兵衛とともに登場する巨大ガマに興奮する。通俗水滸伝豪傑シリーズの『旱地忽律朱貴』は古装ドラマに出てほしいタイプのイケメンで好き。

千葉市美術館 開館30周年記念『江戸の名プロデューザー蔦屋重三郎と浮世絵のキセキ』(2025年5月30日~7月21日)

 同じ日にハシゴをしてこちらにも寄る。千葉市美術館の開館30周年を記念する本展では、浮世絵の始祖で房州出身(ここ強調)の菱川師宣に始まり、春信、歌麿、写楽、北斎、英泉、広重に至る浮世絵の歴史をたどりつつ、蔦屋重三郎が生まれた時代から華やかな黄金期の浮世絵への展開、そして “世界のUkiyo-e”へと進化していくさまを紹介する。「五大浮世絵師」よりはやや古い時代、あるいは同時代だけどあまり尖っていない、どちらかというと伝統的な作品が多くて、それでそれで、浮世絵初心者の私には面白かった。鈴木春信は言わずもがな、鳥居清長とか勝川春章とかの美人画は、いいなあと思ってしまう。

 歌麿は、俳書や狂歌本の挿絵に始まり、美人画もたくさんあって、比較的ゆっくり見ることができた。『当世三美人』とか『江戸高名美人』とか、眉のかたち、目のかたちなど、ちゃんと女性の個性を描き分けている。そして大河ドラマの影響で、蔦屋だけでなく西村屋とか鶴屋などの版元がいちいち気になってしまうのが自分でも可笑しい。英泉の版元は「蔦屋吉蔵」が多い。蔦屋重三郎(二代目)から暖簾分けした可能性が考えられるという。

 併催の『日本美術とあゆむー若冲、蕭白から新版画まで』もすごい展覧会だったが、これはまた稿をあらためて。

慶應義塾ミュージアム・コモンズ 『夢みる!歌麿、謎めく?写楽-江戸のセンセーション』(2025年6月3日〜8月6日)

 経済学者・高橋誠一郎(1884-1982)が収集した浮世絵コレクションを紹介する展覧会。私はこの方の名前を全く知らなかったのだが、調べたら、慶応義塾図書館監督(現在の館長)や塾長代理、さらに国立劇場会長、東京国立博物館長も務めていらっしゃるらしい。本展は、4月に小松茂美旧蔵資料展を見にきたとき、1階の警備員のおばさんが、ニコニコしながらチラシを渡してくれて「次は浮世絵展なんですよ!」と嬉しそうにおっしゃっていたので、ぜひ来てみようと思っていたのだ。しかし例によって土曜開館は会期中に3回しかないので、忘れて見逃さないようドキドキしていた。

 展示は前後期で112件、1回で見られるのはその半分だから、大規模な展覧会ではない。しかし歌麿は多様なジャンルの作品20件以上出ており、どれも摺りがよかった。「教訓 親の目鑑」シリーズが楽しくて、これは「ばくれん」(莫連、あばずれ、すれっからし)。グラスで酒をあおっているのはともかく、左手に持っている大きなカニは酒の肴なのだろうか。

 これは「もの好」。庶民が犬猫を溺愛するのは見苦しいと説いているそうだ。まあ親からすれば、対象が何にせよ、物好きが高ずると婚期が遅れるという心配かもしれない。

 写楽は『松本米三郎のけわひ坂の少将実は松下造酒之進妹しのぶ』が面白くて見とれた。この展覧会、ほとんど写真撮影OKなのだが、この作品は個人蔵らしく撮影不可なのが残念だった。

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