見もの・読みもの日記

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2023年11月関西旅行:東福寺(京博)、東寺宝物館

2023-11-13 21:05:32 | 行ったもの(美術館・見仏)

京都国立博物館 特別展『東福寺』(2023年10月7日~12月3日)

 春に東博で見た展覧会だが、もう一回見て来た。はじめは開山の聖一国師・円爾と、その師匠である無準師範を中心に東福寺創建の歴史を振り返る。東博の展示構成も同じだったと思うのだが、京博のほうが雰囲気が落ち着いていて頭に入る。国宝の『無準師範像』(東福寺像、南宋時代)を見ることができたが、ちょっと俳優の王勁松さんに似てる、と思った(ちなみに無準師範像にはいろいろあるので、この肖像画限定である)。見た感じこわもての円爾さんは、非常に弟子たちから慕われた。円爾が収集した書籍には「普門院」の印が見られるという。古典籍ではよく見る印だが、円爾と結びつけたことがなかったので驚いた。無準師範と円爾、それぞれの遺偈を見ることができたが、どちらも禅僧らしい筆跡と内容でしみじみよかった。師弟の絆は臨終のときまで途切れないのだな。

 展示空間としては、1階の彫刻ギャラリーが楽しかった。中央には巨大な本尊・釈迦如来の実物大バナー。その前に置かれた『朱漆塗牡丹唐草文透彫前卓』がまたデカい。舶来品ではなく日本製らしい。釈迦如来の左右に迦葉・阿難立像、その外側に金剛力士立像、さらに外側に二天王立像。夏に「東福寺先行展示」で二天王立像を見たときは、控えめな和風の仏像と並んで、やや違和感を醸し出していたが、今回は全体が豪快でエネルギッシュな「東福寺カラー」一色でわくわくした。

 東博で見どころの一つだった虎関師錬の『虎一文字』は、ここでも見ることができた。ミュージアムショップでは、胸に大きな『虎一文字』(動物の虎に見える漢字一文字)を配した黄色いTシャツが、「アレ」(阪神タイガース優勝)記念にお薦めされていて笑ってしまった。猫がいることでも有名な『大涅槃図』は、部分複製のバナーしか展示されていなくて、なんだ、本物は来ないのかあ、と思ったら、いま東福寺で令和の大修理完成記念・特別公開(2023年11月11日~12月3日)をされているらしい。紅葉の時期だし、混むだろうなあ。

東寺(教王護国寺)宝物館 真言宗立教開宗1200年記念『東寺の宝物をまもり伝える-修理の軌跡、継承の志-』(2023年9月20日〜11月25日)

 東寺は2023年に真言宗立教開宗1200年を迎えるにあたり、2010年に発願し、10年以上にわたって境内一円の史跡整備、建造物・絵画・彫刻・工芸品・古文書などの修理をおこなってきた。本展ではその修理の成果を一挙公開しており、文書や彫刻に「ここを修理した」という解説が加わっているのが面白かった。特別公開の弘法大師尺牘『風信帖』には、もと5通あったが1通は盗まれ、1通は豊臣秀次に召し上げられて3通が伝わった、という解説があって、どんな顔をしていいものか、困った。

 なお、宝物館の千手観音像の足元には、2021-22年度に修理された夜叉神像2躯も展示されていた。このまま宝物館に常駐になるのかな。保存のためにはそのほうがよいのかもしれない。ちなみに夜叉神堂の扉の貼り紙は「雄夜叉神立像は修理を終えて宝物館に御遷座しています」「雌夜叉神立像は修理のため御遷座しています」のままだった。宝物館の千手観音立像は、戦前、火災に遭ったが旧国宝の指定は解かれず、修理を経て再び重要文化財の指定を受けた。修理は大事、という気持ちで館内の諸像を眺めた(食堂の四天王像にも会ってきた)。

 京都はこれだけにして、慌ただしく奈良へ向かう。

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