〇伝統芸能情報館 企画展『怪談物のつくりかた-役者の芸と仕掛けの世界-』(2023年4月22日~8月20日)
観客席からは知りえない怪談物のつくりかたの一端を、多様な資料を用いて紹介する。国立劇場の裏にある同館で、4月からこんな展示が行われていたとは知らなかった。ちょうど『長谷寺の声明』を聴きに行く機会があったので、開演前に覗いてきた。
いきなり冒頭で出迎えてくれるのは、天竺徳兵衛ものの歌舞伎に登場する蝦蟇の縫いぐるみ。むかしから錦絵や読本の挿絵で気になっていた作品で、現代の公演記録写真を見ても楽しそう。これは一度、舞台を見ておくべきかな…。
文楽『玉藻前曦袂(たまものまえあさひのたもと)』に登場する妖狐ちゃん。ふかふかした九尾のシッポが重たそうである。勘十郎さんが遣っている写真が添えられていた。
玉藻前のかしら。女性の顔からキツネの顔に一瞬で変わるもの。もう1種類、女性の顔を、キツネの顔を描いた幕で隠すタイプもあり、どちらも舞台(2015年、国立文楽劇場)で見た記憶がよみがえった。
これは化け猫の手で、抱き枕くらいの大きさ。歌舞伎『梅初春五十三駅』で使うのだそうだ。舞台は見たことがないが、錦絵には記憶がある。にゃ~。
このほか、怪談物の名作『東海道四谷怪談』の「仏壇返し」の大道具模型や舞台模型もあった。怪談といえば夏が本番のようだが、『東海道四谷怪談』のクライマックス「蛇山庵室の場」は雪の積もった冬に設定されている。
展示は10分くらいで見ることができるが、シアタースペースでは、怪談物ばかり6作品の抜粋映像を流しているので、興味があれば、少し時間をとって訪ねてもよいと思う。入場無料。受付の警備員さんがフレンドリーで気持ちのいい施設。