見もの・読みもの日記

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西洋に学び、日本の様式へ/日本のたてもの(国立科学博物館)

2021-01-14 21:30:41 | 行ったもの(美術館・見仏)

国立科学博物館 企画展『日本のたてもの-自然素材を活かす伝統の技と知恵』(2020年12月8日~2021年1月11日)

 三連休の同じ日に東博→科博をハシゴした。この順番でよかったと思う。東博展のテーマが「古代から近世、日本建築の成り立ち」であるのに対し、科博展はその続きで「近代の日本、様式と技術の多様化」である。

 明治時代になると、まず日本人棟梁たちによる洋風建築や外国人建築家による建築があり、その後、欧米への留学や近代的な建築工学を学んだ日本人建築家による建築が誕生した。明治6年(1873)に竣工した第一国立銀行は清水喜助が設計施工した擬洋風建築。天守閣か、あるいは軍艦の艦橋のように突出する高い楼閣が印象的。明治の錦絵でおなじみの建築だ。清水喜助は現在の清水建設の創設者の名前であることを、わりと最近、意識する機会があった(東京都写真美術館の『日本初期写真史』展のような気がするが、定かでない)。ただし、江戸の大工棟梁だった初代清水喜助(1783-1859)は幕末に死去。第一国立銀行を手掛けたのは、婿養子の二代目清水喜助(1815-1881)である。

 旧石巻ハリストス正教会教会堂は残念ながら行ったことがない。現存する日本最古の木造協会建築だそうだが、設計者は不明。1978年の宮城沖地震、2011年の東日本大震災と、二度の大災害に遭いながら復元され、地域の文化財として大切にされている。ほかにコンドルの三菱第一号館、片山東熊の迎賓館赤坂離宮などを紹介。

 次第に西洋建築への理解が蓄積され、大正から昭和にかけては欧米の最先端の建築思潮の影響もあって、多種多様な近代建築が模索された。いちばん驚いたのは、フランク・ロイド・ライトの帝国ホテル本館(1923年竣工)がVRで復元されていたこと。これはいい。ぜひ、いろいろな建築で試みてほしい。

※参考:TOPPANプレスリリース「博物館明治村と凸版印刷、帝国ホテル旧本館VRを公開」(2018/3/16)

 旧東京科学博物館本館(1931年竣工)は、まさに国立科学博物館の前身である。改修工事が行われたのが2007年だというから、私が小学生の頃に見ていたのは、この建築だ。飛行機のような平面図に微かな見覚えがある気がした。また、当時の学校や教育関係施設の建設に携わった文部省建築課の職員の写真があり、課長・柴垣鼎太郎、係長・高橋理一郎、担当・糟谷謙三の名前が挙がっていたのも興味深かった。文科省の建築課の役人はえらいのだと、藤森照信先生もおっしゃっていたなあ。

 高島屋東京店が、日本の百貨店建築の中で初めて重要文化財に指定されたというのは知らなかった。展示の建築模型には「いよいよ開店」の垂れ幕を下げ、路面には電柱、路面電車や車、行き交う人々も配した楽しいミニチュア。屋上にケージがあって、鹿(?)のような動物がいる。確かに、むかしのデパートの屋上には、小さな動物園があったりしたなあ、と昭和の記憶を思い出した。パネルの解説によると、高島屋の屋上には、一時期、ゾウ(名前は高子)が飼われていたそうだ。どうやって屋上に上げたのだろう…。

 戦後建築を代表するのは、霞が関ビルディングと東京都庁舎。安藤忠雄設計の「光の教会」(1989年竣工)の10分の1模型は美しかった。住宅地に囲まれた狭い一角で、厳しい条件だからこそ、このシンプルな名建築が生まれたことが分かった。最後は「日本のたてものを訪ねてみよう」という、旅心を掻き立てる日本地図があって、ああ、早くこうした建築を実際に気軽に見に行ける状態になってほしい、と切に思った。

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