見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

深川図書館に初訪問

2020-02-25 22:34:45 | なごみ写真帖

 87歳になる母が、ときどき昔の思い出を話し始めることがある。深川森下町生まれの母は、清澄通りを南に下って、門前仲町の交差点を右に曲がると図書館があって、よく通ったという。「今はないよ」と言ったら残念そうな顔をしていた。その後、気になって調べたら、清澄公園を過ぎてすぐ、仙台堀川を渡る手前で右に曲がると「深川図書館」という区立図書館があることが分かったので、この週末に訪ねてみた。

 なんだか由緒ありげな建物。

 1993年に改築された新しい施設なので、館内は明るく、階段も広くてゆったりしているが、レトロな趣きを大事にしている。

 ステンドグラスは新しく加えた意匠で、昔はなかったようだ。職員の方に「復元ですか?」と聞いたら、カウンターの奥から『深川図書館100年のあゆみ』という冊子を持ってきてくれた。2009年に同館で開催された展示の解説図録らしい。現在は入手不可能と言われてしまった。その場で見せてもらったら、とても面白かった。

 深川図書館は、1909年(明治42年)、深川不動尊の西の深川公園に、日比谷図書館に次ぐ2館目の東京市立図書館として開館した。建物は東京勧業博覧会(1907年)の瓦斯館として使われたものを東京市が譲り受けたものだった。しかし初代の深川図書館は、1923年(大正12年)の関東大震災で焼失。震災の「焼け残り本」もあるそうだ(どこかの帝国大学図書館みたい)。

 1928年(昭和3年)現在の清澄公園の南側に移設。昭和7年生まれの母の記憶にあるのは、たぶん(所在地を少し間違えていたけれど)この二代目図書館だろう。1945年(昭和20年)1月には空襲の直撃で大破するなど苦難の歴史を経て、江東区立図書館として今日に至るのだそうだ。

 冊子には、言葉でしか知らなかった半開架式(金網の外から押して、読みたい本を指定する)の写真があり、戦前から児童室や婦人室があったことも分かって興味深かった。古い事務書類がきちんと残っているのも貴重である。何より、こんな下町に(失礼!)早くから市立図書館が存在していたことには驚いたし、嬉しかった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする