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見もの・読みもの日記

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日本文化の水脈/春の優品展 和歌の世界(五島美術館)

2013-04-29 19:23:31 | 行ったもの(美術館・見仏)
五島美術館 『館蔵 春の優品展-和歌の世界-』(2013年4月6日~5月6日)

 五島美術館は、昨年、4回連続の「新装開館記念名品展」に通って、見るべき館蔵品はだいたい見尽くした感があるが、やっぱり新しい展覧会が始まると、いそいそと足が向いてしまう。

 会場は、まず歌仙絵コレクションから。上畳本の紀貫之や佐竹本の清原元輔は、挙措も風貌も堂々と描かれている。それに比べて、後鳥羽院本の平兼盛や平仲文(藤原仲文の誤記)は、ちょっと風格に欠けるが、歌人の個性が出ていて面白い。大中臣能宣や源俊頼の面長な顔立ちは、身分の低さを表しているのだろうか。高貴な人物は総じて福々しい丸顔に描かれるので。

 めずらしいところでは、安田靫彦の『鎌倉右大臣』(実朝)、それから展示ケースに江戸時代の『集外歌仙』という冊子が出ていた。室町後期から江戸初期の「地下歌人」36人の和歌と肖像を集めたもので、その中には、毛利元就、伊達政宗、武田信玄などの武家歌人が含まれるという。展示箇所は毛利元就の図。武者としての肖像とどう違うのか、興味深い。絹表紙の上等な装丁だというが、それはよく見えなかった。

 古筆は「高野切古今集」第1種、第2種の揃い踏みから。やっぱり第1種がいい、と昨年くらいから思うようになった。おおらかな童心を感じさせる。「筋切」も好きだ。藤原佐理を伝承筆者とするが、近年は藤原定実の筆とする説が有力だという。でも、佐理と同系統の大胆さとスピード感が私の好み。ぐるりと会場をまわって、最後に覗いたケースの作品が美麗だったので、おっと思ったら、伏見天皇の「広沢切」だった。さすがだな~。薄めの墨を使っているのだが、鉱物の結晶のように明晰な線。迷いがなく、ブレがない。ほれぼれする。全体に万葉集と和漢朗詠集が多いように感じたのは、蒐集者の趣味だったのだろうか。

 会場の中央列には、茶道具が取り合わせてあって、はじめ意図がよく分からなかったが、和歌の世界に由来する「銘」を持つものが選ばれていた。

 展示室2には、国宝『源氏物語絵巻』の鈴虫一、鈴虫二、夕霧、御法。加藤純子氏の復元模写と比べながら見る。あまり混んでいなくて、ゆっくりできた。

 慈円の『法華経二十八品和歌』の解説「上部や文中の合点は兼実や定家と推測され」を読んで、兼実さんか~とにやにやしてしまう。しかし「合点」(チェック)だけで、どうやって主を推測するんだろう。学問ってすごいなあ。

 展示品に登場する和歌の翻刻と現代語訳がすべて添えられてあったのは、とてもありがたかった。絵巻、茶の湯、近代書道など、日本文化の水脈として生き続ける和歌の世界を感じる展覧会である。
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