○井筒和幸監督『パッチギ!LOVE&PEACE』
http://www.pacchigi.jp/loveandpeace/
前作は、公開から間もない時期に見に行ったら、映画館はガラガラだった。しかし、ずしりとくる感動があって、たっぷり泣かされた。その後、次第に評判が上がるのをうれしく思いながら見守っていた。
今作は、前作に比べると最初からメディア露出度が高かったと思う。イデオロギー的な悪評を除くと、「熱い感動」「心暖まる佳作」のような好評価ばかり聞こえていたので、また泣かされるかな~と思って見に行った。結果、それほどでもなかった。うーん。やっぱり、「戦争」というテーマが重過ぎるのか。戦争映画のヒロインとして「お国のために死んでほしい」という台詞を言わされたキョンジャが、舞台挨拶で、自分の父は朝鮮人の逃亡兵だった、父が生きのびたおかげで自分がいるのだ、という告白をするのがクライマックス・シーンなのだが、どうも直球過ぎて感動が湧かない。
でも、映画やTVドラマの感想の書き込みをネットで見ていると、最近のエンターテインメントは、直球でないと受け入れられないらしい、と感じる。小説で「行間を読む」訓練を積んでいれば、当然、読み解ける(と思われる)演出が、多くの視聴者には分からないらしいのだ。最初、私は本当にびっくりしたが、だんだん状況が分かってきて慄然とした。
新人女優として、特攻隊員の恋人を演ずるキョンジャは、「お国のために死んでほしい」ではなく、「生きて帰ってきてください」と言うべきだと主張し、われわれ観衆は、どっちに賛同するかを迫られる。分かりやすい。しかし、分かりやす過ぎる。Aの言葉にBの感情を込めるとか、Cの本心を隠してDの表情を装うというのは、当たり前の大人の振る舞いであり、そこに文学の生まれる余地もあったはずなのだが...
全体としては、愚昧だったり、狡猾だったり、非合法だったりする主人公たちの行為を、それでも(”生きる”ためであるならば)肯定的に捉えるという視点が貫かれていて、好ましい。なのに、何故、根幹のテーマにかかわるところを、あんな単純な二項対立の図式で言語化してしまったかなあ、と惜しまれる。クライマックスの直後、乱闘シーンになだれ込むのは、制作者の照れかくしなのではないかと疑った。
Wikipediaが本編を「前作のような泣いて笑えるテンポの良いエンターテインメント的な物語展開は抑えられている」「音楽と物語との関係、バランスはいまいち」と評しているのは、おおよそ妥当な線である。
たまたま見終わったあとに、井坂俊哉、中村ゆり、桐谷健太によるトークショーがあって、握手キャンペーン続行中の井坂俊哉さんに握手してもらった。作品の出来は別として、彼、いまどきの若いお父さんぽくって、いいよなー。
http://www.pacchigi.jp/loveandpeace/
前作は、公開から間もない時期に見に行ったら、映画館はガラガラだった。しかし、ずしりとくる感動があって、たっぷり泣かされた。その後、次第に評判が上がるのをうれしく思いながら見守っていた。
今作は、前作に比べると最初からメディア露出度が高かったと思う。イデオロギー的な悪評を除くと、「熱い感動」「心暖まる佳作」のような好評価ばかり聞こえていたので、また泣かされるかな~と思って見に行った。結果、それほどでもなかった。うーん。やっぱり、「戦争」というテーマが重過ぎるのか。戦争映画のヒロインとして「お国のために死んでほしい」という台詞を言わされたキョンジャが、舞台挨拶で、自分の父は朝鮮人の逃亡兵だった、父が生きのびたおかげで自分がいるのだ、という告白をするのがクライマックス・シーンなのだが、どうも直球過ぎて感動が湧かない。
でも、映画やTVドラマの感想の書き込みをネットで見ていると、最近のエンターテインメントは、直球でないと受け入れられないらしい、と感じる。小説で「行間を読む」訓練を積んでいれば、当然、読み解ける(と思われる)演出が、多くの視聴者には分からないらしいのだ。最初、私は本当にびっくりしたが、だんだん状況が分かってきて慄然とした。
新人女優として、特攻隊員の恋人を演ずるキョンジャは、「お国のために死んでほしい」ではなく、「生きて帰ってきてください」と言うべきだと主張し、われわれ観衆は、どっちに賛同するかを迫られる。分かりやすい。しかし、分かりやす過ぎる。Aの言葉にBの感情を込めるとか、Cの本心を隠してDの表情を装うというのは、当たり前の大人の振る舞いであり、そこに文学の生まれる余地もあったはずなのだが...
全体としては、愚昧だったり、狡猾だったり、非合法だったりする主人公たちの行為を、それでも(”生きる”ためであるならば)肯定的に捉えるという視点が貫かれていて、好ましい。なのに、何故、根幹のテーマにかかわるところを、あんな単純な二項対立の図式で言語化してしまったかなあ、と惜しまれる。クライマックスの直後、乱闘シーンになだれ込むのは、制作者の照れかくしなのではないかと疑った。
Wikipediaが本編を「前作のような泣いて笑えるテンポの良いエンターテインメント的な物語展開は抑えられている」「音楽と物語との関係、バランスはいまいち」と評しているのは、おおよそ妥当な線である。
たまたま見終わったあとに、井坂俊哉、中村ゆり、桐谷健太によるトークショーがあって、握手キャンペーン続行中の井坂俊哉さんに握手してもらった。作品の出来は別として、彼、いまどきの若いお父さんぽくって、いいよなー。