見もの・読みもの日記

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慈尊院・弥勒仏坐像ご開帳

2005-03-06 23:12:53 | 行ったもの(美術館・見仏)
○慈尊院(和歌山県)弥勒仏坐像 特別ご開帳

 和歌山県の九度山町にある慈尊院は、高野山参道の起点にあたり、安産・子育てなど女性の信仰を集めた寺院でもあるが、仏像ファンにとっては、国宝・弥勒仏坐像(平安時代)で知られる”垂涎の聖地”である。

 私が初めて慈尊院のご本尊の写真を見たのは講談社ムック『国宝の旅』(2001年発行)だったろうか。強く湾曲する眉、はっきりした鼻梁、厚い唇は、とおい異国の王者を思わせる。台座は黒い蓮弁で構成され、赤みの強い彩色文様が、ひときわ妖艶な印象を与える。「代々秘仏として伝えられてきたためにほとんど後世の手が入ることなく、保存状態もきわめて良好である」という。まさに”奇跡の秘仏”というべきだろう。

 この本尊は21年ごとに公開されており、次回は2015年の予定だった。ところが、吉野・熊野・高野山の世界遺産指定を謝して、3月3日から9日までの7日間だけ、11年ぶりに特別公開されることになった。私は東京からはるばる見仏に出かけた(3月4日)。

 南海高野線九度山駅で下りると、慈尊院の「特別公開」を知らせるポスターが、ぽつりぽつりと貼ってある。見覚えのあるご本尊の写真である。ポスターに導かれて、山あいの静かな町中を歩くこと20分ほど、慈尊院に到着した。

 勾配の浅い檜皮葺の屋根を乗せた弥勒堂の正面が開いている。ただし、扉の幅は、上下左右とも、ちょうどご本尊の体躯の幅しかない。しかも参拝者は、かなり離れたところから遥拝しなければならない。うーむ。目の悪い私にこの条件はキツい。写真で見慣れた、あの彫りの深いお顔立ちがぜんぜん分からない。光背もほとんど見えない。台座の蓮弁の彩色文様が写真と同じように見えたのが、せめてもの慰めであったが...これで東京に帰るのは、あまりにも心残りだった。

 記念にあのポスターを譲ってもらえないかしら。もちろんお金をお支払いしてもいい。そう思って、ご朱印帖を預けていた和尚さんに聞いてみた。実はこのとき、ちょっとしたアクシデントがあった。墨書の下に押す2種のハンコの押し位置を、和尚さんが間違えてしまったのだ。「えろうすまんなあ、まあ、これも記念と思うてや」と言われて、あまりものごとを気にしない性質の私は「ああ、はい」と請け合ったあと、「あのう、ポスターっていただけないでしょうか」とお尋ねしてみた。そしたら和尚さんはうなずいて、そばにあったポスターをくるくる巻くと、「ないしょで持っていきぃや」という身振りで、そさくさと渡してくれた。なんだか脅し取ったみたいで、ちょっと慌てたが、ありがたく押し戴き、隠すようにバッグに入れた。

 というわけで、私の手元には、その記念ポスターがある。見れば見るほどうっとりするお姿だが、敢えて掲載はしない。お堂の正面で中を覗きこむ参拝者の写真のみ挙げておく。



 慈尊院ご本尊のお姿は下記を参照。公開は9日(水)まで。ポスターには「拝観料500円」とあるが、どこかで方針が変わったらしく、無料だった。

■九度山商工会「隠れ」観光名所のページ
http://www2.w-shokokai.or.jp/kudoyama/frm-kanko.htm
コメント (2)
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