ディヌ・リパッティ(著者:畠山陸雄、2007年6月15日、(株)ショパン刊)
著者はルーマニアに在住し、当地出身のクララ・ハスキルやリパッティを研究されている方とのことで、伝説の名ピアニスト「ディヌ・リパッティ」(1917~1950)の生涯を実に丹念になぞった力作だった。
あのクラシック音楽の”聖人”五味康祐氏が「ショパンの演奏はリパッティ」とうわごとのように言っていたピアニストで30代前半で若くして夭折したため今だにその才能を惜しむ人が多い。
読み進むにつれて、クララ・ハスキル、トスカニーニとの出会いなど古き良き時代の名前が次々に出てくるので懐かしかった。
日本でのリパッティのまとまった伝記は本書が初めてとのことでその面では貴重な書籍だが、惜しむらくはリパッティの生涯の軌跡に集中するあまり、肝心の演奏に関する記述があまりにも少なすぎるように思った。
ピアノの優雅な音が匂い立ってくるような情緒的な雰囲気に乏しく、その辺は彼の全てのCD盤についての個人的な感想、解説で補えばよかったのにと思った。本当にリパッティの演奏に愛情を感じるのであればそこまでやってしかるべき。
ただし、なにぶん、リパッティは50年以上も前のピアニストなのでいい録音で残されたCD盤が少ないが、この機会に自分なりにリパッティ再発見でその真髄に触れてみたくなった。
リパッティの演奏はずっと以前、レンタルでショパンのワルツ集を聴いて好感を持った覚えがあるが、何といっても五味さんがあれほど推奨しているのでまず間違いのないピアニストとの確信が持てる。早速オークションにアクセスして”リパッティ”で検索。
その結果「リパッティの肖像」(4枚セット)が見つかった。バッハの「主よ人の望みと喜びよ」、ショパンのワルツ集、グリーク、シューマンの各ピアノ協奏曲など彼の代表作が目白押しで入っていたので迷うことなく即決して落札した。
出品者のご好意で2日後には到着し、目を見張るスピードで手に入れることが出来た。
なお、余談だがこれでトスカニーニのオペラ集(10枚セット)、クライバー指揮の「ばらの騎士(DVD2枚)」、メニューインのヴァイオリン協奏曲(5枚セット)に加えてこのリパッティ盤と、未試聴の盤が次々に積みかさなっていく。しかも、まだ読んでいないコナン・ドイルのミステリーもたまっているし、釣りの仕掛けも作らねばならない。
もっと時間が欲しい!