「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

悪貨は良貨を駆逐する

2024年07月07日 | 音楽談義

前々回のブログ「理系人間にクラシック好きが多い理由」の続きです。

大好きな音楽を聴くときに「数学」を意識する方はまずいないと思うが、じつはその底面下にはそれが秘かに横たわっているというお話。



本書を読んでみたが、なにぶん自分の読解力では荷が重すぎたようで完全に理解するにはほど遠かったが、概ね理解できたエキスだけを記して恰好だけつけておこう(笑)。

「古代ギリシャでは数論(算術)、音楽、幾何学、天文学が数学の4大科目とされていた。そのうち音楽は数の比を扱う分野とされ、美しい音楽は調和のとれた音の比によって成り立っており、それこそが美の原点と考えられた。

もっともよく協和する二つの高さの音は1対2の関係(つまり1オクターブ)により作られているというように、ここでは常に音は数と対応して考えられ、また美しい数の比は美しい音楽を表すとも考えられた。

そもそも音楽は数学とは切っても切れない関係にあり、メロディーもビート(拍)も和音も、数の並びそのものである。つまり書かれた音符は数の並びなのである。数として認識された音は、身体的行為としての演奏を通して音楽になる。

したがって、私たちは何気なしに音楽を聴いているが、それは無意識のうちに数学にふれていることにほかならない。

「音楽を考えることは数学を考えることであり、数学を考えることは音楽を考えることである」
 

とまあ、簡単に噛み砕くと以上のような話だった。

どんなに好きな音楽であろうと長時間聴くと自然に(頭が)疲れてしまう経験もこれで説明がつくのかもしれない。

とにかく、本書は超難しかったけど音楽と数学とは切っても切れない縁を持っており、これで理系人間に音楽好きが多い理由が、何となく分かってもらえたかな~?

「ど~もよく分からん、もっと詳しく知りたい」という方は、直接本書を読んで欲しい(笑)。

さて、実はこのことよりも、もっと興味のある事柄がこの本には記載されていたのでそれを紹介しておこう。こういう思わぬ“拾いもの”があるから濫読はやめられない。

第3章では数学家(桜井氏)と音楽家(坂口氏)の対談方式になっており、数学の観点から「アナログのレコードとCDではどちらの音がいいか」について論じられた箇所があった。(158頁)

数学家「これは数学と物理学で説明できます。デジタルを究極にしたのがアナログです。レコードの音はアナログだから時代遅れだと思う方がいるかもしれませんが、数学を勉強した人は逆なのです。アナログの音が究極の音なのです。

CDは1秒間を44.1K(キロ)、つまり4万4100分割しています。その分割した音をサンプリングと言って電圧に変換してその値を記録する。これをA/D(アナログ→デジタル)変換といいますが、このCDになったデジタルデータはフーリエ変換によってアナログに戻されます。

しかし、レコードの原理はマイクから録った音の波形をそのままカッティングするので原音に近いのです。だから究極では情報量に圧倒的な差があるのです。CDは情報量を削っているから、あんなに小さく安くなっていて便利なのです。」

音楽家「ただし、アナログで圧倒的にいい音を聴くためには何百万ものお金が必要になりますよね(笑)」

数学家「それなりのリスニングルームとそれなりの装置と、そこに費やされる努力はいかほどか・・・。だから趣味になってしまうんです。それはやはり究極の贅沢みたいなことになります。そんなことは実際に出来ないということでCDができて、さらにiPodができて、どんどんデジタルの音になっています。」

音楽家「結局、それで一つの文化というものが作られました。アナログの時代には“オーディオマニア”という人種がいたのだけれども、今、そういう人種はいなくなってしまいましたね。ほんのわずかに残っているみたいですが。」

その「ほんのわずかに残っている人種」のうちの一人が自分というわけだが(笑)、いまだに続いているアナログとデジタルの優劣論争においてこの理論は特に目新しくはないものの、いざ改めて専門家からこんな風に断定されると、
「ハイレゾ」をどんなに詰めてみても所詮「アナログには適わない」ということを頭の片隅に置いておいた方が良さそうだ。

我が家のケースではもう20年以上も前にワディアのデジタルシステムを購入してアナログとあっさり手を切ったわけだが、それではたしてよかったのかどうか?

その後にはさらにエスカレートして「ワディア」から「dCS」に乗り換えてしまったがこれらの機器の
値段を書くと「お前はバカの上塗りか!」と言われそうなので差し控えるが、これだけのお金をアナログに投資する術もあったのかもしれない。

   

つい最近も仲間のお宅でレコードの音を聴かせてもらったが実に自然な「高音域」が出ているのに感心した。

いまだにアナログに拘る人の存在理由を現実に思い知らされるわけだが、貴重なレコード針が手に入りにくくなったり、ターンテーブルの高さやフォノモーターの回転精度、アームの形状で音が変わったり、フォノアンプの性能に左右されたり、有名盤のレコードがたいへんな値上がりをしていたりと、いろいろ腐心されていたのでレコードマニアにはそれなりの悩み(楽しみ?)もあるようだ。

また、DAコンバーター、真空管プリ・パワーアンプ、あるいはスピーカーなど周辺システムに細心の注意を払ったCDシステムと、幾分かでもそれらに手を抜いた場合のレコードシステムのどちらが「いい音」かという総合的な問題も当然残る。

結局のところ、俯瞰(ふかん)しないと、その優劣について何ともいえないのがそれぞれの現実的なオーディオというものだろう。


まあ、CDにはCDの良さもあって、前述のようにソフトの安さ、取り扱い回しの便利さなどがあるわけだし、今さらアナログに戻るのはたいへんな手間がかかるし、第一、肝心のレコードはすべて処分してしまっている。

もはや乗ってしまった船でオーディオ航路の終着駅もぼちぼち見えてきたので、CDで「潔く “まっとう” するかなあ」と思う今日この頃~。

あっ、そうそうこのところ聴いてる音楽ソースといえば 昔好きだった希少な曲目をタダで聴ける、そしてリモコン一つで簡単に聴ける 「You Tube」オンリーになっているが音質にまったく不満はないので大いに重宝している・・、「悪貨は良貨を駆逐する」(グレシャムの法則)のかな~(笑)。



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