今年の夏も「節電対策」が声高に叫ばれている。電気を湯水のように使うオーディオ・マニアにとってはちょっと気が引ける話。まあ、出来ることといえば、こまめにオーディオ機器のスイッチを切るとか音楽を聴く時間を減らすことぐらいしか思い浮かばない。
家庭における節電対策の筆頭に位置するのは何といっても「エアコン」の使用だが、音楽を試聴中にこれを使うまいとすれば、窓を全開せざるをえないが、そうすると室内から音量が盛大に漏れ出て隣近所に大迷惑ということになる。したがって「オーディオ=夏=エアコン」は切っても切れない縁みたいなもの。
まあ、これからの季節はミニシステムで聴いたり、出来るだけ小音量で聴くにこしたことはないので、小音量時のボリュームの調節がしやすい様にこの際「DAコンバーター」(「ワディア27ixVer.3.0」、以下、「DAC」)の出力電圧を下げてみることにした。
このDACには購入した当初から入力セレクト機能とデジタルボリューム(0~100目盛の可変:1db=2目盛)がついているのでプリアンプを使わなくてもいいのが利点だが、現在使っている目盛の範囲はせいぜい15~40前後。
何しろ出力電圧が普通のDACでは2V前後だが、これは、0.4V~8.45Vまで16段階に調整が出来て、現在は工場出荷時の4.26Vなのでちょっと高すぎる。
7日(木)の早朝から作業開始。
馴染みの東京のショップから教えてもらった通りに慎重に裏蓋のネジを10か所ほど外すと、天板が取れる。
左が内部の全景画像で、右が出力調整箇所を拡大したもの。オレンジ色のところが左右両チャンネルの該当部分。
各4つの白いスイッチをオープン側とクローズ側のいずれかに倒して、いろいろ組み合わせることで出力の調整が出来る。実に簡単。この方式は依然所有していたマーク・レヴィンソンのプリアンプ「No.26SL」のゲイン調整でも同じやり方だった。ちなみに、このプリアンプを下取りに出して購入したのがこのDACだった。
今回は3.43Vに設定。まあ、保守心理が働いて激変緩和のつもりで心持ち落としたという程度。ここまでは順調に作業が済んだが、元通りにCDトランスポートからSTグラスケーブル、クロック・リンクのグラスケーブル、そしてBNCデジタルコードを接続し直したところ、肝心のBNCデジタルコードの接続が「NO DETA」とDACの小窓に表示されてうまくいかない。
「おかしいなあ?」とあれこれやってみて何度も確かめるものの、ガンとして受け付けない。トホホ、こんなことならボリューム調整なんて”いらんこと”をしなければよかったと思ったが後悔先に立たず。
このDACの入力端子には「STグラス」「BNC」「プラスティック」「XLR(バランス)」の4種類が設けられている。
仕方なく、いつ購入したかさえ忘れてしまっていた「XLR(バランス)デジタルコード」(1本)を引っ張り出してきた。まったく存在感が希薄だったケーブルだからきっとオークションで安物を手に入れてそのままにしておいたものだろう。
この接続はうまくいって、とりあえず試聴してみたところこれがなかなか”いい線”をいっているのである。「STグラス」と比べると明らかにレンジが広くなっている。ちょっと高域が耳障りだが、補って余りあるほどに音の鮮度が向上している。
安物で、こんなにいいのなら本腰を入れてゲットしてみるかと「オークション」を覗いてみた。通常使われるRCAのデジタルコード(75オーム)は沢山出品されているが、XLRデジタルコード(110オーム)になると極端に出品数が少ない。
その中で狙ったのが「トランスぺアレント」(アメリカ)という会社のデジタルコード。何しろ、途方もない百万円単位のSPコードを販売しているコードの専門メーカーなので間違いはあるまい。
「プレミアム」と「レファレンス」という2種類のコードが出品中。すぐにネットで定価を調べてみると、前者が5万6千円で、後者は上級機種として何と13万6千円!それが入札価格の状況は前者が5千円、後者が1万9千円。両者とも落札期日は9日(土)の夜。
オーディオ・マニアの心理としては当然のことながら後者の「レファレンス」に食指が動くのは致し方ない。土曜日は夕食が済んでからずっと戦闘モード。パソコンとにらめっこしながら思い切って「3万1千円」で入札に参加すると、「あなたが最高価格です」の表示にニンマリ。
しかし、5分とおかずに「高値更新」のメールが届いた。「これはダメだ~」と強力なライバルの存在に戦意喪失。昔ならすぐに負けん気を出すのだが、もはやそういう時代は遠い過去の話。何といっても先立つものがないのが一番の理由だが。
結局、「な~に、大した違いはあるまい」と自分を慰めながら次善の策として「プレミアム」で我慢してこの入札に専念することにした。自分も随分、成長(?)した!
それでもずっと入札件数「0」だったのが、終了間際になってどっと殺到してきて13件にも達したので驚く。
価格の方も「5000円」スタートだったのだが最終的には「1万2千円」で当方が落札。まあ、妥当というか割安な買い物だろう。この出品者(長崎)はあまり欲のない方のようで、真空管の「6SL7GT」(1955年製造、GEのニッケル仕様の未開封品)も合わせて安価でゲットさせてもらった。
オークションの出品者も様々のようで、明らかに相場よりも高い価格で設定しているのを見かけたりすると、”強欲さ剥き出し”みたいで、自ずと人品骨柄がしのばれる。
商品の程度は写真ぐらいでは分かりずらいし、双方ともに氏素性も分からない人間同士の取引というハンディがあるのだから相場よりも安い価格で出すのが当たり前で、競り合いで上がっていく分には仕方がないと思うのだが。
とにかく、遅くとも水曜日までには新しい「XLRデジタルコード」がやってくる。さ~て、どういう音がするかなあ。