「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

事実は小説よりも奇なり~「死に山」~

2024年05月06日 | 読書コーナー

ようやく今日(6日)で長かった連休も終わりです。

温泉観光地・別府の宿命とはいえ、県外ナンバーの車による渋滞も終わるので営業関係者には申し訳ないが内心ではほっとしています。

で、連休に入る直前のブログ「本のお薦め」(4月27日付)の中で紹介したように、この期間中は家にこもって、日頃にもまして「読書三昧でいこう」と、書いてたのをご記憶でしょうか。



このうち、とりあえず3冊を読了したがいちばん面白かったのは「死に山」だった。ぜひ皆様方にもご一読をお薦めしたいので中身に分け入ってみよう。

本書は「ノンフィクション」である。表紙の副題にあるように「世界一不気味な遭難事故」「ディアトロフ峠事件の真相」とある。

概略はこうである。

「1959年、冷戦下のソ連・ウラル山脈で起きた遭難事故。登山チーム九名(ウラル工科大学在学生)はテントから一キロ半ほども離れた場所で、この世のものとは思えない凄惨な死に様で発見された。

氷点下の中で衣服をろくに着けておらず、全員が靴を履いていない。三人は頭蓋骨折などの重傷、女性メンバーの一人は舌を喪失。遺体の着衣からは異常な濃度の放射線が検出された。

最終報告書は「未知の不可抗力によって死亡」と語るのみ――。地元住民に「死に山」と名づけられ、事件から50年を経てもなおインターネットを席巻、われわれを翻弄しつづけるこの事件に、アメリカ人ドキュメンタリー映画作家が挑む。

彼が到達した驚くべき結末とは…!」

どうです! ちょっと興味をそそられませんか・・。

何しろ「全員死亡」しているので、最終的な真相は「憶測」以外の何物でもないが、要は「科学的説明がつくかどうか」の一点に絞られる・・、そして、本書は見事にその着地に成功していると見た。

読者レヴュー(ネット)から一件だけ借用させてもらおう。

「原作タイトルは「dead mountain」。草木が生えていない山という意味。日本語タイトルは売れ行き狙いのひねったタイトル。よくない。

ドキュメンタリーの書き方は素晴らしい。1959年と2012-2013年を一章づつ割り当てて、交互に関連させながら記述していく。冷静な筆致で、そのためにぐいぐいと引き付けられる。日本の本ではこんなきちんとしたノンフィクションはない。実に面白かった。

事件内容
1959年の冬、ウラル工科大学の学生とOBがウラル山脈北部のオトルテン山に登るため出発し、2月1日、ホラチャフリ山(dead mountain)の東斜面でキャンプした。その日の夜、何かが起こり、全員死亡した。

最終的にテントは見つかったが、テントには内側から切り裂かれた跡があり、誰一人、テントにはいなかった。遺体はテントから1.5kmほど離れた場所で見つかったが、それぞれ、ロクに服を着ていなかったし、ほぼ全員が靴を履いていなかった。4人は低体温症、3人は頭蓋骨骨折などの外傷で死亡していた。一人は舌がなくなっていた。一部の衣服からは異常な濃度の放射能が検出された。ディアトロフはリーダーの名前。


様々な仮説
1.マンシ族による攻撃。
事件の起こった頃、マンシ族はそのあたりに居住していなかった。また、ホラチャフリ山には獲物がなく、近寄らなかった。平和な人々で、捜査活動に最初から協力した。この仮説は最初に否定された。

2.雪崩
斜面の傾斜角は16度で、雪崩の起こる確率は非常に少ない。テントは発見された時、立っていたし、この仮説も否定された。

3.強風
一人か二人、外に出た時に吹き飛ばされたので、それを他のメンバーが助けに出た。この仮説ではなぜ全員がテントの外に出たのか、誰も靴を履かなかったのか説明できない。テントを切り裂く必要もない。

4.武装集団
一行の持ち物は後に確認すると、ほとんど何もなくなっていなかった。三人の遺体に激しい損傷があった点は崖(高さ7m)から落ちたことで説明される。舌がなかった点は雪解け水による腐敗現象と思われる。

5.兵器実験
同時期に「光球」が目撃されている。これは2月初めという証言だったが、2月17日と推定されるので、この仮説は否定される。

6.放射線関連の実験
衣服についていた放射能は異常というレベルではなかった。冬の核実験でウラル山脈に到達したことも考えられる。この仮説も否定された。
最後に謎を解くのは、NOAAの気象科学の専門家である。今はポピュラーな現象だが、この当時は知られていなかった。これ以上、書くと良くないので、これで終了。

以上のとおり、簡にして要を得たレヴューです! これでわざわざ本書を読まなくても内容を把握できたことでしょう。

で、問題は最終的な真相(科学的な仮説)をここで明らかにするかどうか・・、ハムレットみたいに悩みますな~(笑)。

そして、これは日頃の個人的な思いだが、他人のブログを読んでいて いちばん腹が立つ のは「肝心なことは明らかにせずに、もったいぶった書き方」をしていることに尽きる!

したがって、このブログもこの轍(てつ=わだち)を踏むわけにはいかないでしょうよ(笑)。

したがって、真相を明らかにしておくことに決めた。

ただし、もし本書を読みたいという方がいらっしゃるのであれば、ここから先は読み進まないようにね~(笑)。

で、その真相とは・・。

何よりもテントの設置場所が悪かった。冬のウラル山脈は想像を絶するほどの強風が吹きつける。周囲の地形(小高い二つの山に囲まれていた)により、何と「超低周波音」が発生し、それがテントにも盛大に押し寄せた。

恐怖に捕らわれた学生たちは取るのもとりあえず、全員が真っ暗闇の雪原にほとばしり出た。そして、あるものは道に迷って雪原の中に埋まり、あるものは崖から落ちて重傷を負った。そして全員が死亡した・・。

というのが、本書による種明かしだった。個人的には納得です。それ以外に科学的な説明はつかないと思う。

周知のとおり、人間の耳の可聴周波数帯域は「20~2万ヘルツ」である。

20ヘルツ以下の「超低周波音」・・、低音の「お化け」ですぞ! 聴いたことはないがやはり不気味ですねえ。

オーディオシステムにも むやみやたら に低音を求めると精神に異常をきたす恐れがあるのでどうかご用心を~(笑)。



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