「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

「サブウーファー」の追放

2018年07月28日 | オーディオ談義

長いことオーディオをやっていると、ときどき妙なことを考えることがある。

オーディオははたして「引き算の世界」なのか、それとも「足し算の世界」なのか

「いきなり何だ?」と、ご不審の向きもあることだろうから
まず「引き算」という考え方の骨子を述べてみよう。

はじめに前提として実際の演奏会場の特等席で聴く音を100点満点の「原音」と仮定しよう。

その原音に出来るだけ近づいた音で室内でいつでも聴けるようにするためマイクや録音機器によってデジタル録音するとする。完璧な収録は、まずあり得ないのでその録音の時点で「原音」からいくばくかの情報量が失われ減点がなされる。

次に音声信号をCDにプレスする時点でも同様に減点の対象となる。(CDの材質もガラスからポリカーボネイドまであって、音質もさまざまだが)ここまではいわば他動的な話。


次に、お好みの「CDトランスポート → DAコンバーター → プリアンプ → パワーアンプ → スピーカー」と自宅で音楽再生に必要なオーディオ機器が接続用ケーブルとともに加わっていくが、すべて電気回路を使用するのでその都度音声信号が次第に原音から遠ざかっていき減点が加算されていく。

したがって、最終的に「再生音が耳に届くまでに原音に対してどれだけ減点を少なく留めることが出来たか」という尺度を問題にするのが「引き算」的な発想。

いわば「シンプル イズ ベスト」で、オーディオ機器は必要悪として仕方なく使うという考え方が根底にある。いまだにコンサート至上主義が根強い人気を誇っているのもむべなるかな。

一方、「足し算」的な考え方というのはスタート時を0点として自分が目標とする音を100点と仮定すると、この目標に向かって上記のように再生に必要な機器を順次加えていくごとに点数が加算されていく。そして各機器の個性を理想的にブレンドしていきながら最終的に目標の音に近づいていく。

たとえどんな音であろうと自分さえ気に入っていれば「良し」として、原音にこだわることなく積極的に機器を活用していくのがいわば「足し算」的な考え方。

以上、まことに手前勝手な理屈を前提にして自分のケースに当てはめてみると、以前は「足し算」派だと思っていたが、むしろ「引き算」派かもしれないと思うようになった。その辺を具体例を挙げて述べてみよう。

まず、我が家のメインスピーカーの一つである「AXIOM80」(最初期版)について。

周知のとおり、この「じゃじゃ馬」的なスピーカーをうまく調教できるどうかの目安はひとえに「神経質な高音域と貧相な低音域をいかに克服するか」にかかっている。


ただし、低音域が豊かになれば高音域の問題は聴感上では自動的に解消するので結局「豊かな低音域をどう確保するか」に尽きる。

そこで、駆動するアンプの選択を中心に格好の実験材料としてこれまで長期間にわたっていろいろ試してきた。

たとえば「AXIOM80」をウェストミンスターの箱に容れてみたり、片チャンネル2個で鳴らしてみたり、M&オースティンの大出力アンプ「TV-A1」(KT88プッシュプル)で駆動してみたりしたが、未熟のせいで見当違いもあっていずれもAXIOM80本来の持ち味を発揮させるまでには至らなかった。

とうとう手に負えないまま、最後は仕方なく「サブウーファー」(150ヘルツあたりでハイカット)の力を借りてどうにか凌いできた。

もちろん、これはけっして好ましい対策ではなく、(サブウーファーの使用なんて)いわば邪道だが、現実問題として無いよりもあった方がいいので仕方なく使ってきた。

ところが、前回のブログで述べたように「AXIOM80」を容れるエンクロージャーを思い切って入れ替えてみたところ、アッと驚くほどの変わりようで低音域から高音域まで実にバランスのいい音が出てきてくれたのである。

     

この音なら、もう「サブウーファー」なんて必要ない。同時に木製ホーンも要らないと思ったほど(笑)。

このエンクロージャーは板厚が1.5センチ、響きに悪さをするネジはいっさい使用せずボンドだけで接着し、肝心のARU(ユニットの背圧調整器)は底板に30センチ四方の穴を開けて極めて目の細かい市販のステンレスの網を張り付けている。

まったくの自己流そのものだが「メーカー仕様なんて何するものぞ!」の気概は大いに評価してもらいたい(笑)。

ただし、あまり大きなことも言えず、このエンクロージャーは所詮は素人づくりなので剛性の点でちょっと弱い。せいぜい口径25センチクラスのユニットまでが限界だろう。

ちなみに、材料代はすべて合わせて1万円に満たない額だった。

オーディオに必要なものとして、このブログでも再々登場する「血(お金)」と「汗」(創意工夫)と
「涙」(経験)のうち何が大切かって、やっぱり「汗」と「涙」なんですよねえ。

それにつけても、やっぱりオーディオは引き算的な発想「シンプル イズ ベスト」が王道ではないかと思う今日この頃~(笑)。

 


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