「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

読書の楽しみ

2017年07月27日 | 読書コーナー

遡ること11年前の、このブログを始めたころの話だが、オーディオの記事ばかり登載すると「オーディオ馬鹿」と思われそうなのでオーディオ関連記事の次回の分には必ずといっていいほど他の話題の記事を挟んだものだった。

しかし、今となってはオーディオ関係の記事一辺倒でも肩身の狭い思いをしなくなり、もし「オーディオ馬鹿」と云われても「実際にその通りだから仕方がない」と、やや開き直り気味で家族も呆れ果てている(笑)。

とはいえ、まだ「読書の楽しみ」を捨てたわけではない。今回は久しぶりに面白い本に出会ったので「読書コーナー」を復活させてみた。

         

まず、「湊 かなえ」さんの「リバース」

湊さんの処女作「告白」がとても面白かったので注目している作家だが、先般、テレビの連続ドラマで「リバース」を放映していた。

観たかったが、映画やテレビ・ドラマが原作の質を上回ることはあり得ないので、「何よりも原作を読む方が先だ。」と、ずっと我慢して、この3連休(15~17日)で娘が持ち帰ってくるのを待ちわびていた。

その待望の「リバース」だったが、一読した結果は期待に違わず「なかなか面白い。」

点数をつけると4点(5段階評価)といったところ。ミステリーなので種明かしは禁物だが、結末の一行で「そういうことだったのか」と、納得。それにしても後味はあまりよろしくない。

全体的にあえて難をいえば湊さんの文章はチョット粘っこくて、くどいところがある。ワン・センテンスが長くて引っ張り過ぎるせいか「行間を読ませる」文体ではないのでどうしても余韻に乏しくなる。

湊さんがいつぞやのテレビの対談番組(NHK)にご登場され「小さい頃から本が好きで、自分ならこういう展開にするのにと、勝手に空想するのが好きでした。」と、仰っていたが、得意とするストーリーの展開力に加えて、文体が伴えば「鬼に金棒」なのだが。

チョット上から目線の偉そうな物言いになってしまったが、小学生のころから今日までずっとミステリーを読み耽ってきたので、つい厳しい目になってしまう。どうか悪しからず(笑)。

次に、「追想の探偵」。

これは図書館から借りてきた新刊で、作者の「月村了衛」さんの本は初めてだったが、人探しのミステリーと人情話とがうまく一体化していて楽しく読めた。

これも4点(5段階評価)といったところ。ネットでどなたかのピッタリのレヴューがあったので、勝手ながら引用させていただこう。

「特撮雑誌の編集者(女性)が、過去の作品に関わる人物を探し、その裏にあった様々な物語を明らかにしていく。人探しがメインで、ほぼ個人行動+協力者という感じで形式としてはまさに「探偵」という雰囲気でよい。

各話の真相はともすればうさんくさい人情話みたいになりそうなところを、「特撮」というモチーフと(人間以上に)作品愛にあふれた主人公というバランスでうまくやっている。

中では、作品内作品の描写がキレイで哀しい『封印作品の秘密』と狐につままれたような読後感の『帰ってきた死者』がいい。『最後の一人』の畳み方も好き。」

とにかく「アラサー」の女性主人公の「人探し」にかける情熱が半端ではない。たとえばたいへん貴重で珍しい写真を雑誌に掲載するため、数十年前の古くてぼんやり映った集合写真の全員から同意を得ようと、芋づる式に一人づつ正体を明かしていく行動力と手法に大いに感心した。

単なる「通りすがりの人間」が写真に映っている可能性もあるので、とても全員の同意を得るのは無理だと思われたのに撮影場所の立地環境や人間関係から推理して快刀乱麻のように根気よく突きつめていく快感はミステリーの真犯人を追い詰めていくのとよく似ている。

「そうか、そうか」と、主人公の「根気振り」に感情移入してしまい、つい
文豪「夏目漱石」が若き日の「芥川龍之介」に送った言葉を思いだした。

「人は才能の前には頭を下げないけれど根気の前には頭を下げる。牛のようになりなさい。」

よしっ、オーディオも牛のように根気よく続けていくことにしよう(笑)。


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