気候のいい秋になると、買い物や、行楽、訪問にと人の動きが活発になる。けっしてオーディオマニアも例外ではない。
7日(日)の別府市内のオーディオ愛好家ご訪問に続いて、14日(日)はオーディオ仲間の湯布院のAさんともども福岡県うきは市にお住いのKさん宅へお伺いした。Kさんは我が家にも二度ほど来ていただいたことがあり、よく存じている方である。
かねて、凄いシステムとの噂を聞いており、一度お伺いしたいと思っていたのだが、このほどようやく日程調整がついた。
実はお忙しいのも道理で、檀家を1000戸以上も抱えておられるお寺のご住職さんである。別府から「一般道」経由で丁度2時間あまり、快晴の中を助手席のAさんに道を教えてもらいながら13時15分に順調に到着。
広いお寺の境内の一角に駐車して、ご自宅の2階へと案内してもらった。
ワ~ッと思わず、声が出てしまった。
部屋の広さは、軽く100平方メートルを越えるだろう。ここで、ざっとシステムの概要を紹介しておこう。
≪スピーカー≫
低域用ユニット 「4181」(励磁型、ウェスタン、エルタスを各1セットで片チャンネル2個)
中低域ユニット ウェスタン555ドライバー(2個)+16Aホーン
中高域ユニット ウェスタン555ドライバー+ホーン
高域ユニット ツィーター(カンノ)
≪アンプ≫
真空管アンプ DA30シングル+電源(いずれもセパレートで特注品)
磁界を嫌って、トランスのカバーまですべて木製。左の写真が本体と電源部。右側の写真は「励磁型SP」の電源部。
≪プレーヤー・システム≫
ご覧のとおり
おそらく全国でも滅多にお目にかかることがないと思われるシステムである。
果たして、どんな音が出るんだろうかと興味津々。こういう時の期待感と緊張感が織り交じった気持をどう表現すればいいのか、まったくオーディオ冥利に尽きる瞬間なのはたしかである。
大型システムにありがちな、いかにも相手をねじ伏せるような音が出てくるのか、それとも、さりげなく、ひっそりと、しめやかに鳴る音なのか。
てっきり前者だろうと予想していたのだが、まったくの見込み違いで完全に後者だった。万事に控え目な印象を受けるKさんならではの音だった。
うまく表現できないが、出来るだけ音量を絞って音楽を遠くから俯瞰して聴くような鳴り方といえばいいのだろうか。
中域を主体にして低域はまるでそれに付随してくるみたいな鳴り方で、(低域を)絶対にボンつかせず、それでいて必要なときにズバッと鮮やかな分解能を伴って出てくる印象を受けた。
いやあ、こんな鳴らし方があるんですねえ~。
それに、一音、一音に厚みというか立体感が伴っているようで、音の質感が際立って素晴らしい。ときどき、音を表現するときに使われる「高級な音」「安っぽい音」という言葉があるが、その区別がようやく感覚的に分かったような気がした。こういう音を聴かされるとずっと後々まで尾を引きそうだ。
Kさんが主に聴いておられるソースは昔のSPレコードである。「SPこそ最高のハイファイだ」が持論とのことで、たしかに78回転の情報量は通常のLPレコードに比べて図抜けていた。
カザルスの無伴奏チェロ・ソナタ(バッハ:画像左)は圧巻だったが、おまけというかプレスリーの大ヒット曲「All Shook Up」までSPで聴かせてもらった。
ほかにも持参してきた「ちあき なおみ」のCDや「サキコロ」のレコード盤を聴かせてもらったりしているうちにあっという間に時間が経って16時ごろになった。
これ以上、居座ってご迷惑をおかけしてはと「大いに勉強させていただきました、ありがとうございました。」と感謝しながら席を立ったところ、Kさんから一言、「この本を読まれましたか?」
「いいえ、かねて読みたいと思っていますが、まだ読んでいません」「よろしかったら進呈します」「エ~ッ、ほんとうにいいんですか」
Kさんは「永遠の0」を読まれてから百田尚樹のファンのようで、自分のブログでずっと以前、同じ著者の「錨を上げよ」の書評を取り上げたことをどうやら憶えておられたらしい。この本は図書館で予約しているものの、まだ新刊ほやほやで凄い順番待ちの最中だったので喜びもひとしおだった。
ほんとうに実り多き一日だったが、今回聴かせてもらった音を我がシステムに生かそうと思うと課題山積。
しかし、しっかりと(聴いた音を)脳裡に焼き付けたのでこれをメルクマールにしながら、これからいろんなアプローチを試してみるのも面白そうだ。