佐藤功の釣ったろ釣られたろ日誌

釣り・釣りの思い出・釣り界のこと・ボヤキ.etc

肥前鳥島のイシダイ釣り 1994・5

2009-07-31 20:14:00 | 釣り
鳥島という名前を聞くと一般の人は、台風シーズンになると気象台の発表に出てくる島を思い浮かべるが、釣人の言う鳥島はその台風に出てくる島とは違い九州・男女群島の北西35キロに位置する肥前鳥島を指す。

いまでは長崎から4時間足らずで走る高速の瀬渡し船がある。この地区に走る渡船は、それぞれが競い合って、2000馬力ものエンジンを積んでいるので海上を飛ぶが如くに走っていくのである。

この見渡す限りの大海原に鳥島(南岩、中岩、北岩)がポツンとある。それぞれが小さい岩礁で、釣人が上がれる人数も5~6間人ぐらいずつで、少し荒れるともう上がることもできないのだが、その分、魚の釣れる確率は他のどんなところにも負けないくらいに釣れるのである。

この島のイシダイシーズンは4月の後半から6月ぐらいまでが最高で、この時期には大きな話でないが何百という石鯛が釣れるようである。ただ年間を通じてこの磯に上がれる日が少ないために、上がれたらそれだけの魚が釣れるのであろう。

男女群島に通う人の中で、この鳥島を目指さない人はいないだろうといわれるぐらいだが、この磯に上がれる確率は30%ある無しという。三度挑戦して一度上がることができれば良い方である。

その代わりと言うわけではないが、このシーズンに上がることができれば絶対に満足のイシダイ釣りができる。

私の釣り仲間で、住所が男女群島かと言われるK君などは早くから釣行し良い結果を得て楽しんでいるが、その当時は、平戸口から出て6時間ほどかかったと言うので、船に弱い僕にはとても無理と思い、「入れ食いだったよ」との話に「よかったなー」と言いながら「こん畜生」と思っていた。

それから数年、渡船の出発地が「長崎新港」と近くなり、時間も2~3時間も短縮されたので何とか行けるだろうという事になった。

同じ連盟のT氏から「今度五島の福江から船を出すので行かないか」との誘い。二つ返事で連れていってもらうことにした。その上「会長が行くのなら九州のイシダイ名人の田中勝利氏を誘うから」と、これまた嬉しいこと。

この時期、鳥島を目指す船が多く自由競争(まだ今のように順番が決まってなかった)であったから、早い者勝ちでこの最高の磯を独占できたのである。

当日、大阪から飛行機で長崎へ、そして五島の福江島へと乗り継ぎ、福江島のホテル五島にて着替えをして、食料の買出しも済ませて、船に乗り込んだ。

メンバーはT氏と仲間の遠征グループ、私と田中名人で、この当時、田中氏はエサ店である丸正の御大で彼がこの一帯を牛耳っていたと言えるほどの実力者であった。

今回の船はこの辺りの離島行きの船では一番船足が遅いので何の心配もなく鳥島へ上陸することができた。

お天気も良いのに他の船はどうしたのかなと思ったら、足の速い他船がいたのだが、彼の無線の一声で男女群島にUターンしたというビックリ話があった。

中岩に田中名人とT氏、関西つりを語ろう会のA氏と私の4人が上がった。他のメンバーも南岩と北岩に別れて上がった。この中岩の前方に南岩があり、その間が水道になっていて潮がよく流れるので、上物釣りはこの場所がポイントである。

底物は船付きから少し左に回ったところの足場が比較的良い所がポイントであると教えられて、そこで2人で釣ることにした。

エサはサルボウ貝で、その割った身を3から5個を連珠にして付ける。竿は手持ちの南方宙釣りスタイルである。今回こちらに来る前に九州から送ってもらったサルボウ貝をベランダで1個ずつ割り、身を出していくつかのビニール袋に分けて冷凍して持ってきた。

現場でサシエとして使うのはこうして持ってくればいたって楽である。磯に上がれば早く第一投したくて気がせくが、これがあれば暫くはマキエだけを割ればよい。

ところが家のベランダでこれをする大変さが良く分かった。ベランダに貝の血がとびちり、ズボンは汚れるは、ハエがこの臭いで無数に飛んでくるは、後で女房に文句は言われるはで大変な目にあったので、2度とこれはやるまいと思った。

いつもながらの磯上がりの一投目は、わくわくした気分と期待感溢れるものがある。今回は長年行きたくて仕方なかったイシダイのふるさととも言うべき鳥島での釣りである。

先ずはタナ探りで手持ちで10mほど送り込んだが何の変化もないので、再投入とリールを巻いてくると、針先にはエサのかけらもない。2投目、3投目、同じことの繰り返し、これはおかしいと感じた。

そして以前、島根県のトモ島で釣った時のことを思い出した。同じようなことがあり、落ち込みで掛け合わして竿を3つに折ったことを。

そうか此処も落ち込みで魚が食ってきているのだと解った。4投目を放り込むなりすぐに、ギアをストップさせた。すると途端にゴツゴツと石鯛特有の重々しいアタリが来た。何と此処の石鯛は竿1本足らずのところで当たっているのである。

先手を取られたが、すぐに竿を持ち直して暴れまわる石鯛をヨイショと放り上げた。50センチクラスの銀ワサの第一号であった。

いつもながら初物には少なからず興奮する。初めて石鯛を釣った人に握手を求めると、どんなに大胆な人でも興奮して手が震えているのが分かる。そのくらい値打ちがある釣りなのだ。

眺めていると、田中名人から「何してるねん、マキエをしてすぐに次を釣らなければ」と声が掛かった。
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