呑む気オヤジ/蔵王山麓蓬莱庵便り

蔵王山麓暮らしのオヤジの日記。合唱も映画もドライブも温泉も、たまには俳句も・・・😄

呑む気オヤジの「観る・聴く・丸呑み!」~映画「沈まぬ太陽」

2009-12-07 | 映画(DVD)の話

映画「沈まぬ太陽」を観にいった。
昭和30年代、漸く戦後の復興も一段落し高度成長路線を歩み始めた日本。
そのナショナルフラッグキャリア(その国を代表する航空会社)である国民航空で、主人公の恩地は労働組合の委員長として、乗客の安全を守るため従業員の労働条件改善を強く求め、会社と対立していた。
結果、待遇改善は勝ち取るが、委員長を降りた途端に報復人事でパキスタン、イラン、ケニアと海外のドサ廻りを命じられる。
足掛け10年、やっと日本に戻れた恩地を待っていたのは、社内での相変わらずの待遇差別と、そしてジャンボ機墜落という未曾有の大惨事だった・・・。

山崎豊子の同名小説の映画化作品だ。
海外のドサ廻りを孤軍奮闘で黙々と勤める主人公、その夫を思いやる妻、父に対する誹謗中傷に心を痛める子供たち・・・。
然も在りなんと思わず納得してしまう、国家権力と航空会社幹部の癒着ぶりや社内権力争い、そして組合幹部に対する露骨はパワハラ。
20年の歳月が経っても我々の心にしこりのように残る御巣鷹山の悲劇・・・。
あの大惨事と半官半民の航空会社が抱える政官癒着のダークサイドをうまく織り成し、その中で翻弄される主人公たち従業員や家族の生き様をリアルに描いており、まさに山崎ワールドを余すところなく上手く映像化していると思う。
渡辺謙を始め大物主役級の役者が揃い、骨太の出来となっている。
また主人公の生き様や御巣鷹山の犠牲者の遺族を描くシーンでは、観ていて胸に迫るものがあり、思わず目頭が熱くなることも多かった。
3時間の上映時間も全く長く感じられず飽きることもなかった。

しかし、この作品はあくまでもフィクション。
主人公の恩地には実在のモデルが存在するし、国民航空は間違いなく日本航空をモデルとしたもの。
モデルであるO氏が日航内で散々冷や飯を食わされて苦労したこと、実際の日航の社内にも、相当にきな臭いところがあったことなども事実だろう。
だが作品中の恩地に感情移入し、国民航空=日航として、その理不尽さに憤ったりすることはあまり意味のないことのように思う。
(そんな単純な人はいないか)
モデルはあっても、これは良く出来たフィクション。そのリアルさと重厚な人間模様に感心、感服、感動すれば良い。
フィクションをノンフィクションに引き戻して、四の五の言っても仕方がないと思う。
久々の大作かつ秀作です。






コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする