♪「幻夜」東野圭吾著 集英社文庫



TVドラマでも話題になった「白夜行」の続編的作品。(以下、ネタばれあり)
「白夜行」で、亮司を踏み台にして(?)一躍伸し上った雪穂。
「幻夜」では、その雪穂のその後の姿を想像させる「美冬」が主人公の一人として登場する。
そして雪穂に尽くし切った亮司の生まれ変わりのような「雅也」がもう一方の主人公。
二人は阪神大震災を機に、一緒に支えあって生きてゆく。
しかし支えあうというよりは、美冬が雅也をリードして二人の人生を「創造」してゆく。
人生というものは、ある程度運命で道が決まっていると思う。
それを美冬は、自分の理想の通りに作り変えてゆく。
そこに美冬の暗くどす黒い執念があり、恐怖を感じてしまう。
そして雅也は、なぜそこまで美冬に尽くすのか・・・。
ミステリーとして、とても面白く読めた。
確かに「白夜行」と似たようなストーリ展開だし、主人公も繋がる。
小説の組み立てとしては、「白夜行」が雪穂と亮司の感情や接点を一切描かないという新しい(?)試みがとても面白かったが
「幻夜」のほうはオーソドックスな書き方となっている。
でもミステリーとしての完成度は高く、さすが東野!という感じだ。
こちらでも二人を追う刑事がもう一方の主人公になっているが
「幻夜」にしても「白夜行」にしても、この刑事を中心とした重厚な映画作品でもう一度味わって見たい。
野村芳太郎監督あたりが撮ったら、とてもよい作品になりそうだ。
それと、ぜひ「完結編」が読みたい。
雪穂→美冬→??、二人の男を踏み台にして人生を「創造」してきた美貌の女。
この女の最後は一体どうなるのか。
最後まで自分が創造した人生を全うするのか、それとも人生はそんなに甘くはないのか・・・。