今日、ある病院へ患者見舞に行った時に、往時のことを思い出したのでそれを書いてみる。
一時期とある公立病院に事務職として勤めていたことがある。その時の出来事。その病院はご多分にもれず毎年収支は赤字が続いていた。公立病院とて赤字を出し続けるわけにいかないので、監督機関から経営改善が至上命題として下りてくる。
収入面では入院患者を増えなければ改善が見込めないのであるが、その病院の利用率は大体が70%台、多い時で80%で偶に90%になる時もある程度、年間通せばやはり70%台に収まるものだった。
ある時院長室にいたら、総婦長が入ってきて「利用率が100を超えました!」とにこにこしながら報告に入ってきた。院長もそれを聞いて「よかった、よかった」と大喜び。
傍らでそれを聞いて私も院長も総婦長も経営改善に苦労していたことを知っていたので労をねぎらう意味で「よかったですね」と相槌を打ったものである。
その後自席に戻って、数字の動きを見るうちに気がついた。「おいおい、患者が増えたといって喜んでいいのか」ってこと。どの患者も痛い、苦しい思いをしている、そういう人が増えたということを喜んでいいのか、素直に喜べないなあという思いが浮んできたのである。また、医療制度からみても負担が増大することは問題でもある。
しかし、患者が来なければ病院はやっていけない。病院がつぶれれば医療サービスの低下を招く。
医療事業というのはそういうジレンマを抱えているのである。そんなジレンマを感じず金儲けだけの医療関係者が結構多いように思われるが・・・。
医療関係者は患者の痛み、苦しみを取り除くということに日夜邁進する。それは尊いことなのであるけれども、その裏で患者のその痛み、苦しみが飯の種になっているを自覚して業務に従事しなければならないと思う。
(注)利用率が100%を超えるのは、朝1人が退院、その病床 に午後1人入院したような場合、2人とカウントされるからである。当然診療報酬も2人分払われるのである。
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