おはようございます。
生き生き箕面通信2309(150420)をお届けします。
・「左折の改憲 考える時」――なのか?
日本が押し付けられた屈辱的な条約・安保条約からの呪縛を一気に排除する。そして、日本が真に独立するための”秘策”、それが、「リベラル勢力による憲法改正」だ。こうした主張を、池澤夏樹が今月4月9日付け朝日新聞に寄稿しました。
このコラムのタイトルは、「左折の改憲 考える時」。サブ・タイトルは「主権回復のために」。「終わりと始まり」(5面、大阪版)と題する池澤夏樹さんの月1回定番コラムです。
まず、「憲法について自分は姿勢を変えるべきなのか」と、悩ましい心境を正直に吐露しました。1冊の本を前に、暫く前から考え込んできたというその本の名は、「日本はなぜ、『基地』と『原発』を止められないのか」(集英社インターナショナル)です。
「箕面通信」でも、2274号(先月3月16日付け)をはじめ複数回で取り上げた矢部宏治さんの実に内容のある一冊です。日本がなぜ、アメリカの属国となっているのか、いわゆる「権力の奥の院」とは何か、を具体的に露わにした”真実の書”といえます。
池澤さんは、「辺野古に基地を造らせないと沖縄県民が言っても、アメリカが造ると言えば日本政府には反論の権限がない。彼らは空疎な発言を『粛々と』繰り返して暴力的に建設を進めるしかない」と、指摘しました。
そうです。日本政府には全く権限がありません。残念ながら、日本では憲法が最高法規ではない。最高位に位置する法規は、日米安保条約です。最高裁を信じて最後まで争っても、肝心の最高裁は、「統治行為論」なる詭弁を弄して、判断停止を起こすことにしています。すでに世紀以上前、砂川判決(1959年)で田中耕太郎・最高裁長官がその詭弁をひねり出し、その後この判例が確定して、日本国民は手も足も出せなくなっています。法的に日本をアメリカに売り渡したのは、最高裁の田中長官なのです。
そしてその後はずっと、独立国と信じている日本国が、実はアメリカの思うままの隷従国に過ぎない事態が続いています。アメリカは、日本安保条約に定められた法理によって、合法的に「日本のどこへでも、いつでも、そしていつまでも」基地を造ることが認められています。
「そんな、バカな」といっても、れっきとした法律に定められた事実なのです。日本政府が、日本国民の反対を押し切って、そうした条約をアメリカ政府と結んだのだから従わざるを得ません。
こんな屈辱的な条約をひっくり返す「奥の手がある」というのが、池澤コラムです。そして、「左折の改憲」を訴えます。リベラルの側からの改憲によって、「施行後、外国の軍事基地、軍隊、施設は、国内のいかなる場所においても許可されない」という条項を入れれば、日本国内からアメリカ軍基地は一掃され、日本は国家主権を回復できる、と記しました。
「もちろんアメリカは嫌がるだろうが、日本国民の総意とあれば従わざるを得ない。それを実現したフィリピンの実例もある。さあ、どうする」と、ボールを私たちの方に投げてきました。
左から右まで広範な読者をかかえる朝日新聞の紙面とあって、池澤さんは直截な言葉遣いを避けましたが、いわんとするところは、「安保条約を破棄せよ。そのための改憲を」という過激な内容です。さあ、どう受け取りますか。