こんにちは。
生き生き箕面通信2297(150408)をお届けします。
・フランスで憲法9条を考える
ここフランスは多民族国家です。人種のるつぼです。いまやパリ市内では人口の半分がアフリカ、アジア、中東の人々だそうです。そういえば、近くのショッピング・センターや公園でも、ブルカをまとったムスリムや明らかにアフリカ系、アジア系と分かる人々を多く見かけます。
そして、その人々がいわゆるフランス文化とはなじみにくい面をもっているため、さまざまな摩擦を生んでいます。とくに、「低賃金で仕事を奪われる」という不満が強く、「福祉ただのりで、福祉費の国庫負担が増える」といった反発もあって、移民制限政策を掲げる右派の「国民戦線」が勢いを増しているわけです。
現在の中東、北アフリカは収拾のつかない混乱状態の最中にあります。IS(イスラム国)、シリア、イラク、イエメン、エジプトやチュニジア、そしてパレスチナとイスラエル、そこにアメリカや欧州勢、ロシア、中国などがからんできて、誰にも何が何だか分からない状態になってしまいました。
とくにISの出現で、国民国家の限界が見えてきたという主張も出されるようになりました。
こうした混乱状態から平和を導き出す唯一の道が、憲法9条の精神だと指摘され、ボクモまったく同感です。
多文化共生論が専門で同志社大大学院グローバル・スタディーズ研究科教授の内藤正典さんは、タリバン勢力との争いで混迷を深めているアフガニスタン問題で和平の道をさぐるため、タリバン代表とアフガン政権代表らを招へいして、同志社大で討論会を開くなど地道な努力を重ねてきました。
その内藤教授が、「大切なのは信義です。ウソをつかず、信頼関係を築くことです。場合によっては、相手の懐に飛び込んでいくことも必要です。それなくして対話はなく、対話がないところに平和はないからです。そしてそのためにもっとも必要なことは、決して武力や相手を威嚇や、攻撃をしないことです」と、説いています。
そのうえで、「日本国憲法9条の『国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する』こそ、現代のイスラム世界で起きているカオスのような戦乱を平和に導く唯一の精神であり、実効性の高い規範でもあるのです」と指摘しているのです。
内藤さんは、「イスラム戦争」(集英社新書)を出し、その中でペシャワール会の中村哲さんの言葉を引用しています。
「長年にわたってアフガニスタンで医療をはじめとする人道援助を続けてきた医師の中村哲氏は次のように指摘しています。
『9条の威力とは、そういうものだと思います。日本は軍事協力に消極的だった結果として、世界に敵をつくってこなかった。アフガンでは敵意ではなく、恩人としての意識だけが残った。それは日本のブランド力、歴史的遺産とも言うべきでしょう。
だから、集団的自衛権を使えるようにすることは、ひと言で言えば<危険>です。近隣国の敵意が増して緊張状態をつくり出すだけで、防衛になっていない。戦争以外の手段で国を守るのが戦後の理想だったのに、戦争ができた昔に戻す動きに見えてしまいます。
米国の介入でアフガンの人々の暮らしは明らかにひどくなりました。活動を長く続けていて、こんなひどい状況は初めて。昔は考えたこともありません。
近年の戦争はなるべく自国の兵隊の犠牲は出さないように、無人機で攻撃する。手段を選ばない汚い戦争です。あの仲間に加わるのかと思うと、身が汚れるような気がします。
大事なのは、人間の犠牲を減らすための外交努力です。自分は殺されるのは嫌だから、相手も殺さない。これが普通の感覚じゃないですか』(中日新聞2014年5月3日より)」
以上、長々と引用しましたが、まもなく5月3日、憲法記念日です。改めて「9条」をいとおしみ、それだけではなく「平和を築く強力な味方」として活用したいものです。とりわけこれから続々と出されてくる集団的自衛権行使のための「安倍の安保法制」を木端微塵に粉砕したいものです。
*こちらはいま朝の5時を回ったところです。外はまだ真っ暗です。