生き生き箕面通信

大阪の箕面から政治、経済、環境など「慎ましやかな地球の暮らし」をテーマに、なんとかしましょうと、発信しています。

生き生き箕面通信664 ・「領土問題は存在しない」で展望は開けるか

2010-09-30 06:30:34 | 日記
おはようございます。「尖閣諸島小沢さんならどうします」と今朝のよみうり時事川柳。既に細野剛志・前幹事長代理が北京に入りました。
生き生き箕面通信664(100930)をお届けします。

・「領土問題は存在しない」で展望は開けるか

 尖閣沖衝突事件で前原外相は「(中国が主張する)領土問題は存在しない」と繰り返しています。日本政府の統一見解も同じです。

 早い段階で「いずれにしろ領土問題だ」と発言した蓮舫議員は誤りを指摘され、早々に「領土問題は存在しない」と訂正しました。それ以後、菅政権関係者は「領土問題は存在しない」の一点張りです。そこで思考停止してしまい、一歩も出ることができない呪縛状態に陥りました。

 本日の朝日朝刊は、元外務省条約局長・東郷和彦氏(現・京都産業大世界問題研究所長)の「『領土問題ない』の再考を」という主張を掲載しました。

 まず「船長の釈放で最初の局面が終了した。しかし、私たちの前には、これまでとは違った現実が待ち受けている」と現状ととらえ、「領土に関する立場を堅持しつつ、あらゆる外交的手段を尽くして武力衝突を回避するための施策をとらねばならない」と指摘しています。

 そのために取るべき課題を4つあげています。

 第1が、(日本の)「実効支配に物理的に穴をあける政策は、武力衝突という最悪の結果を招き得る」ということを、あらゆる言葉とチャンネルを駆使して中国側に理解させる。

 第2は、「領土問題は存在しない」という発言は、冷戦末期、ソ連のグロムイコ外相が北方領土問題で日本に対して言い続け、当時の日本人が皆、激しい屈辱感と怒りを感じた表現である。日本の政策の実質は、中国を刺激しないために日本人を尖閣諸島に入れないという、驚くべき柔軟姿勢である。平時なら別だが、武力衝突を視野に入れたぎりぎりの外交をするときに「グロムイコの屈辱」を中国に味わわせることはやめねばならない。前提条件なしに、双方が言いたいことは率直に言い合う外交努力こそ、いま求められている。

 第3に、尖閣諸島が日米安保条約第五条の対日防衛義務の下にあることは疑いない。しかし、わが国ができるだけの外交努力を払わずに、米国人の血を流してほしいと要請することもまた、ありえない。

 最後に、幸いなことに国際世論は日本の味方である。あらゆる機会に、日本の冷静さと条理を尽くした態度を説明していただきたい。

 以上の4点は、「武力衝突を回避する」という一点から考えて、日本がとるべき極めて妥当な方針だといえるのではないでしょうか。

 中国は2年後の首脳部入れ替えの時機をひかえ、今後も「尖閣問題」を使ってくることは確実です。中国側の漁船を操業させる、漁船の安全を確保するという口実で中国艦艇を尖閣周辺で常時パトロールさせる、あるいはガス田で新たな動きを見せる、など次々にカードを切ってくることが考えられます。

 これに対する日本側の対応は、「領土問題は存在しない」だけを後生大事に組み立てるだけのように見えます。気が付いたら、中国が国際社会に対しても自国の主張を浸透させ、日本はいつの間にか「孤立」していた、となりかねません。

 いまの「前原外交」は、現実の動きの前に破たんが見えています。前原外交は、残念ながら、「チンピラ外交」の域を出ていません。その結果、日中関係は極めて危険な状態に陥り、悲惨な様相を呈することになると想定できます。