伊勢すずめのすずろある記

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ちょっと気になる「三重県産の宝石鉱物」

2012年02月25日 | 三重県の鉱物など

 

水晶山産 最高級のトパーズ~伊勢すずめ採集のコレクションより・高さ3.5㎝

 

 三重県下の宝石鉱物の産地

 三重県からも、宝石鉱物が産するよ・・・。と言えば、「ええっ、ホントですか?」と返される。鉱物コレクターやトレジャー・ハンターらには、そのような情報が各県にあるのはごく当たり前の事であるが、そうでない人々には、「まさか・・・。」の話である。しかし、最近、ちょっとばかり気にせずにはいられないようになった。

 と言うのは、小学生の頃より石に興味を持ち、三重県下の鉱物を採集すべく鉱産地を巡り、鉱山(跡)を訪ねたりしながら、何十年と山野を跋渉して来た。そんな中で宝石鉱物の新産地も発見し、幾つかの鉱産地の記載や報告文なども書いて来た。今になって、「伊勢すずめ」が、自らの鉱物歴を振り返る時、気になるのは、やはり三重県下の宝石鉱物の産地情報である。

 中学生の頃知ったのは、「奥鹿野のサファイア」、「種生のオパール」、「水沢のトパーズ」、「三谷のベリル」であった。後年、「三谷のベリル」(採石場跡ゆえ、戦前、既に絶産地となっていた)を除けば、現地での採集も含めて、全ての標本を手に入れたが、これらの産地で今も健在なのは、「水沢のトパーズ」ぐらいである。

 当時の行政区画を書いておくと、

  ・ サファイア ・・・ 名賀郡青山町奥鹿野・奥山谷
  ・ オパール ・・・ 名賀郡青山町種生
  ・ トパーズ ・・・ 四日市市水沢村山之坊・宮妻峡の水晶山
  ・ ベ リ ル ・・・ 阿山郡大山田村三谷

 以上の内、サファイアだけは、紅柱石と珪線石をふんだんに含む脈性ペグマタイトに伴うもので、紅柱石と珪線石の内部に青色を成し、斑点状に介在するタイプであるが、芥子粒程度で、とても「宝石」とは言えない代物である。それでもルーペで観察すれば、青色半透明の結晶面が見られて、結構美しい。確か林道から道なき小谷の笹薮を掻き分け、奥山谷の産地に行きついたのは、30年も前の話である。

 種生のオパールの産地を訪ねた時は、産出場所そのものが既に消滅していたが、その前に知人からサンプルとして、黄土色塊状の小さな採集品を譲って頂いていた。この地のものは、質感は正にオパールであるが、不透明で美観に欠如する小脈を成すものであったようだ。

 水沢のトパーズはと言うと、その情報源は戦前の学術論文で、水晶山のリチウム・ペグマタイトに巨大な晶洞が見つかり、当時、神戸中学校の生徒らによって大小多数の美・巨晶を成すトパーズが掘り出され、同校の理科の訓導(教諭)らによる論文が世に出て、一躍有名になったものである。
水晶山産 美晶トパーズ~伊勢すずめ採集のコレクションより・高さ2.5㎝  それ以前にも別の沢などから小さな結晶が希に採集されていたようではあるが。さらに明治期にまで遡ると、当地よりはむしろ、宇賀渓(旧、員弁郡大安町石榑南)の砂山の方が著名な産地として、全国的に知られていた。

 そして、終戦間際の昭和19年頃に、トパーズを産したこの水晶山のペグマタイト脈は、軍需資源確保の目的で、含リチウム雲母(リシア雲母・チンワルド雲母等)の採掘が成され、その当時の坑道が今も残存している。

 後年、我が輩は、坑道直下の林道下の表土(山土)のさらに下深くから、その当時のペグマタイト・バラストの多量のズリを発見し、大・小全部数えると、500個を優に越えるトパーズの美晶を採集している。この内の約20 個は、正に宝石級の原石サイズと質感を有する美・巨晶である。

 又、さらにその後の話であるが、宇賀渓・砂山直下の小谷の花崗岩体中に、ポケット状を成すペグマタイトの晶洞を偶然に見つけ、三高理研・地学部会のメンバーらと共に、その晶洞粘土の中からアクアマリン級のベリルの結晶10数個を運よく採集している。
砂山直下の水晶谷産 アクアマリン級のベリル~伊勢すずめ採集のコレクションより・長さ約3㎝  この内の一個は、単四の乾電池サイズの淡青色透明で、ブラジル産と見間違う程の見事な柱状結晶である。後にも先にも、当地からこのようなベリルの産出情報は聞かない。

 なお、三重県下のオパールについては、その後複数の産地が記載されているが、高校時代に我が輩が発見した、伊勢市辻久留三丁目の採土場(通称、論出の土採り場)産のオパールは、三重県下では一番きれいであり、既にブログのバックナンバー(伊勢・志摩の鉱物~2010年8月)で紹介ずみである。


辻久留産 小球状のオパール~伊勢すずめ採集のコレクションより・径約0.4㎝


 準宝石鉱物~美・貴石、他

 鑑賞石や装飾品に用いられる美・貴石は、水晶や煙水晶、ローズ・コーツ、玉髄、バラ輝石、蛍石、鉄礬石榴石、ベスブ石、鉄電気石などをはじめ、かなりの種類があって、鉱物ハンターやビギナー・コレクターの好みであろう。三重県各地の花崗岩ペグマタイトやスカルン帯から、美しい結晶も頻繁に採集されている。特に、蛍石の美晶クラスター(群晶)は、以前は紀州鉱山からたくさん産出し、鉱業所で観賞用に銅鉱石などと共に販売されていたが、閉山して久しくなった今は容易くは手に入らない。

 装飾用鉱物については、宝石のような基準は無く、見た目が美しければ何でもよい。但し、加工が容易な事と、量産し採算上見合うことがベースとなる。実際手にとってみると、美石(貴石・半貴石)や美晶鉱物が原石として使用されているケースが殆どであるが、中には宝石小片のくず石(ジェムストーン)から黒曜岩、紅簾片岩に至るまで、実に多くの鉱物、岩石と様々である。さらに、小型のアンモナイトの化石さえも研磨され、高値で取引されている。


 宝石の三条件と4C

 宝石は、一部の例外(生体鉱物である真珠や珊瑚など)を除けば、殆どが鉱物(これには、天然の原石と化学合成された人造鉱物とがある)である。

堀坂山産 鉄礬石榴石~伊勢すずめ採集のコレクションより・最大径約1.2㎝  宝石学の定義する三つの条件を記すと、
  1.比類なく美しいこと。
  2.不変の耐久性を持つこと。
  3.希少価値のあること。
である。

 又、宝石の品質鑑定には、一般に4つのCがその価値(価格)を決定する要素とされている。この4Cとは、
  ・ カラット(Carat)・・・宝石の重さを表す数値。1カラットは、0.2g
    である。
  ・ クラリティー(Clarity)・・・ 輝きを決める透明度。一般に合成宝石
    の方が天然品より勝る。
  ・ カラー(Color)・・・ 宝石独自の色のこと。
  ・ カット(Cut)・・・ 研磨された理想的な切子面等の総合状態。


 その他の三重県産の宝石鉱物

 以上に記述した以外にも、三重県下からは幾つかの宝石鉱物が産する。
水晶山産 リチア電気石~伊勢すずめ採集のコレクションより・最大長約2.8㎝  それらを記すと、
  ガーネット(鉄礬石榴石、他)、リチア
  電気石、アメシスト(紫水晶)、琥珀、
  ヒスイ(硬玉)、ムーンストーン(月長
  石)、アマゾナイト(天河石)、メノウ
  (瑪瑙)、ジャスパー(碧玉)
と、まあ、こんなところでしょうか。


 詳しく述べると、マニアックなコレクターやトレジャー・ハンターの方々を刺激しないでもないので、各々の鉱産地情報などの紹介は差し控えます。


砂山直下の水晶谷産 アマゾナイト~伊勢すずめ採集のコレクションより・左右の長さ約6.5㎝

 

大仏山産 コハク~伊勢すずめ採集のコレクションより・コハクの最長約2.5㎝

 

橡山産 アメシスト~伊勢すずめ採集のコレクションより・晶洞の左右幅約5.5㎝

 

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