伊勢すずめのすずろある記

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少し気がかりな三重県周辺の浅発地震 ~ 忍び寄る「 中央構造線地震 」の東進

2022年08月26日 | 随筆・雑感・回想など


8月22日の 「伊勢湾の地震」 ~ 気象庁発表の画像より

 8月22日の12時42分頃に、鈴鹿市の海岸東方沖10数kmの伊勢湾海底を震源とする小規模な地震があった。気象庁の震度発表のデータ地図を見ると、鈴鹿市で震度2、三重県は津市、四日市市、伊勢市、名張市、亀山市、伊賀市で震度1となっていた。 比較的珍しい震源の地震である。

 伊勢市を除けば、いずれも中央構造線以北の内帯地質区である。 松阪市や明和町など、周辺の市町村に震度記録が無いのに、我が伊勢市だけぽつんと震度1となっていたが、これぐらいの距離では「異常震域」とは言えない。
 震源の深さは20km、マグニチュードは3.2とあったが、この程度の地震では、気象庁は地震のメカニズムについて発表することは無い。

 震源からの直線距離や地盤の地質の違いによって、地震動 ( 揺れ ) の大小が決まるが、特殊な地質構造だと、断層や構造線での波動の屈折や反射、増幅、収束などが生じるので、飛び地でも意外と震度が大きくなる事が知られている。
 又、地震波の直接波に対して、地下の高密度の岩盤を高速で伝播する屈折波もあるが、伊勢湾の地下だと、どれだけの深さに高速度層が存在するのかは定かでは無い。

 そこでまず考えられるのは、伊勢市以外の外帯側の市町村には全く地震動が伝わっていない事から、伊勢市の市街地をほぼ横断する「中央構造線」の存在である。 しかるに、今回の伊勢市の震度1は、この中央構造線の影響と考えられなくもない。


多気町丹生付近に露われた 「中央構造線」 の露頭


 中央構造線は、九州のど真ん中に始まり、四国の北部を縦断し、紀伊水道を経由し和歌山県、奈良県、そして県境の高見峠付近を経て櫛田川沿いに東進し、多気町丹生付近から五桂池を通り、その先は度会郡玉城町野中から積良の辺りで、段丘堆積層や沖積地の地下に埋もれ、潜在断層となって伊勢市の宮川まで達している。
 ここでやや北に屈曲し、辻久留、浦口、八日市場、本町、岩渕、神久、黒瀬等の市街地の地下を横切り、二見町の今一色付近へと続くことが推定されている。


地下を 「中央構造線」 が通過すると推定される伊勢市岩渕の市街地 ( 中央は宇治山田駅 )


 伊勢湾には、埋積された海底の木曽川の河谷 ( 埋積谷 ) があり、これに沿って活断層である「伊勢湾断層」の存在が知られている。 もしこの伊勢湾断層が活動を始めたとすれば、この先々が少し気かがかりである。

 気がかりと言えば、先に記した「中央構造線」も断続的な活断層である。 三重県では、丹生から五桂池付近にかけては「左ズレ」を伴う逆断層であり、各地にその露頭が露われている。
 完新世の時代 ( 完新世=沖積世 ) になってからは、小谷の河川流路の地形の変形などから、西方に80m程相対的に移動し、活動した形跡が読み取れる。

 最近、九州の熊本県に始まった巨大地震の余震域が大分県へと広がり、中央構造線沿いに中~小規模の浅発地震 ( 震源の深さ10km ~ 20km ) が次々と発生し、豊後水道へ経て四国の内陸から紀伊水道、和歌山県へと東進し、さらに奈良県の西部まで広がって来ている。


三重県の主な活断層 ~ 筆者の加筆作図より


 今の処、この中央構造線沿いの中~小規模の浅発地震は、三重県にまでは広がって来ていないようだが、伊勢市の方向へと迫って来ている感触は否めない。
 もしも … であるが、昭和19年 ( 1944年 ) の東南海地震と、昭和21年 ( 1946年 ) の南海地震以降に、巨大地震にみまわれたことの無い伊勢市では、市内や近辺の中央構造線沿いに大規模な地震が発生したら、ハザードマップはあっても、市民の地質学的な知識の乏しさや、形式的な防災・避難訓練の経験だけでは対処しきれず、どれだけの被害が出るか計り知れない。


活断層である 「一志断層」 の露頭 (  松阪市小片野町にて撮影  )


 特に市街地では、段丘地形の真上に建てられた学校や、住宅地の密集した真っただ中にある、高層マンションと隣接するガソリンスタンドがセットになったような場所などは、巨大地震の際には危険極まりなく、日頃から生き延びる為の手段と避難ルートを、充分にチェックしておく必要があるのではないかと思う次第だ。
 中央構造線地震が三重県にも忍び寄る中、対岸の火事をながめるように、平穏で無関心な日常を過ごしている我が伊勢市にも、近未来に襲い来るであろう熊野灘海底の巨大地震や、未曽有の大規模災害などの発生も、今年はいつになく気がかりである。



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