最近、C.D に代わり、アナログ・レコードの良さが再認識されつつあるとの報道がなされ、旧来のアナログ派やレコードのオールド・ファンにとっては、耳寄りな情報が最新のニュースとして伝わって来た。
EPの新盤を最後に買ったのは、むぎふみスターズの「麦畑」(「オヨネーズ」盤とは別の、1989年9月21日、アポロン音楽工業株式会社発売。オヨネーズと共作の別盤)が最後だったかと思っていた処、大手のレコード会社・ソニーが、近年のアナロク盤の人気に乗じてか、かつてのレコードの自社生産を、約30年ぶりに再開するとのことである。(中日新聞・6月30日の朝刊 ~ 6面参照)
レコードファンらにとっては、ありがたい話である。
楽曲の大衆向けの録音媒体が、昭和年代末以降はカセット・テープや8トラ、レーザー・デスクの時代を経て、雑音の無い手軽なC.DやDVD(デジタル音波)がずっと主流であった。
平成年代に入ってからは、国産のレコード・プレーヤーの生産が殆ど無くなり、一部の音楽ファンにしか鑑賞されていなかった、かつてのレコード盤音楽(アナログ音波)への回帰は、音響や音域、音質の良さとは別の、聴覚を鋭く刺激する何かがあるのかも知れない。
かつてのアナログ盤は、EPにしろLPにしろ、盤面の状態やジャケット等の保存程度の良否によって、かなり値打ちに差があるが、その後も全国の主要都市を中心に、中古レコードの専門店があって、限られたレコードファンをターゲットにずっと営業を続けて来ているし、一部の古書店でも取り扱っていた。
生産枚数の数少ないレア盤や、廃盤などの中古レコードの中には、高額を極めたものもあって、それらのジャケット写真入りのランク付けの書物、「秘蔵 シングル盤天国」(1996年、株式会社 バーン・コーポレーション発行。邦楽編と洋楽編がある)が出版された事もあり、コレクターやファンらは全国各地の中古レコード店はもちろんの事、お宝探しに骨董市(ノミの市)や古物商を巡り歩いたものだ。
戦後間もない頃の昭和の時代には、大概の家庭に戦前からの蓄音機があり、78回転のSP盤(10インチ盤)を、鉄針のチリチリ音や盤面のキズによる針飛びなどがあっても、それなりに楽しんでいたものだ。
そして、昭和年代の半ば頃には、45回転や33回転のコンパクトなEP盤(ドーナッツ版)が出回り出し、プレーヤーも持ち運びの出来る程に小型化し、レコード針も長時間の磨耗に耐える、サファイア針等へと変わっていった。
やがて、レコード盤も長時間楽しめるLP盤(10インチ盤と12インチ盤がある)が多量に生産され始め、音響装置もモノラル・タイプから、大型のオートリバースのステレオ・オーディオへと進化していった。
当時の人気歌手らのヒット曲を収録したLP(33回転)や、クラシック音楽等の洋楽盤は、少し値が張ったが、人気歌手の新曲集やスター歌手らのアルバムが出ると、こぞって買い求めたものだ。
そのような時代のレコード商品には、きれいなスチール写真(ペラジャケ)や、タイトル帯、ブック型の数十曲収録のライナー付きの豪華なアルバムをはじめ、歌手のブロマイドやポスターまで付いた、ファン・サービスに創意を凝らしたものまであったが、何んと言ってもEP盤のジャケットは、国内盤、海外盤、邦楽、洋楽を問わず、見るだけでも楽しいものがあった。
EP盤から、カセット・テープやCDへの移行期間の間には、雑誌形式のソノシート盤の波及した時期があったのも、今となっては懐かしい限りである。