語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>古賀茂明の、「脱原発」すべき理由 ~人・組織~

2011年12月07日 | 社会
●情報がまだ出ていない
 「脱原発」/「脱・原発依存」の具体的な道筋やプランを示すだけの材料は、まだない。
 情報がまだ出ていないからだ。東電の情報は、経産省にさえ必ずしも全部は上がってこない。
 今回の事故関連だけでなく、過去のいろいろな事故の情報も、相当歪められたり、隠されていると思う。捏造や隠蔽が問題になったことがあるが、それ以外にも、客観的に評価できる専門家が見たら「これはもう大事故の一歩手前だ」というような事故があったかもしれない。放射線が漏れたのに黙っていたケースは、少なからずあるだろう。身内が原発に勤める地元の人は、報道されない漏洩があった、と言っている。原発のコストについても、さまざまなデータが隠されていると思う。
 今回の事故の情報も、知っているのは東電の現場の幹部(<例>吉田昌郎・福島第一原発所長)だ。それでも、わからない部分が多々あると思う。
 いまこそ東電も経産省も、なぜこんな大事故が起こったのは、問題はどこにあったのか、科学的・客観的に調査・分析して究明すべきだが、やっていない。いろいろな問題が明るみに出るのが怖いのだ。

●経産省は原発推進を堅持
 経産省は、つねに「原発は推進すべきである」という結論ありきだ。
 こんな事故が起きても結論を変えていない。
 事故後、原発の周辺地域の概念が変化した。玄海原発では福岡市が、若さ原発では琵琶湖が30km圏内に入る。原発は新規に建設できない・・・・はずだが、それでも原発は作れる、と経産省は思っている。経産省は、「建設できない」という合意ができない方向に持っていこうとしている。
 周辺地域の概念が変わって当分は建設できないとしても、そのままでは日本が立ちゆかなくなることが、そのうちみんなわかるだろう、と経産省は考えている。
 経産省は、原子力を代替する液化天然ガス(LNG)や再生可能エネルギーの太陽光、風力、地熱発電のウェイトを高めなくては、とは思ってはいる。しかし、原発を減らし続けて、不足分をLNGと再生可能エネルギーで代替するのは非現実的だ、とも思っている。

●なぜ「脱原発」か
 原発推進の考え方そのものに反対だ。できるだけ早く、今動いている原発は止めるべきだ。
(a)人
 今回の原発事故では、人や組織のガバナンス問題が大きなウェイトを占めているからだ。事故の原因や事故後の対応を見ると、技術以外の問題が大きい。おカネさえかければ技術的に安全性を高めることは、ある程度はできる。しかし、科学的・理論的にこうだということを実現していくのは、結局、人や組織だ。これが信頼できない。そもそも、
 ①議論の段階で、本当に安全を最優先した議論ができるのか。
 ②議論できたとしても、設計する段階で、議論した安全策を忠実に実効できるのか。
 ③設計図はできても、施工する段階で設計図どおりにできるのか。
 ④そのとおり完成しても、運転する段階で本当に決められたとおりできるのか。
 ・・・・各段階に必ず人が入る。人的なミスや人による想定外を本当になくす力があるのか。

(b)組織
 発送電分離や競争の導入などで、電力市場をどれほど改革できるのか。
 電力自由化と原発問題は大きく関わる。うまく自由化できなければ、現在の電力会社と役所の体質は、基本的に以前と同じだ。競争がないから緊張感がない。何をしても電力を買ってもらえるし、原発の大事故を起こしても政府が守ってくれることがわかった。そう思っている組織に、ちゃんとした規律が働くはずがない。
 役所も同じだ、あんな大事故を起こしても、経産省の事務方トップは割り増し退職金がもらえることがわかった。何も変わる必要がない、というメッセージだ。
 これでは、安全を最優先する方針を立てても、そのとおりに実行できない恐れが大きい。

 以上、古賀茂明(田原総一朗・責任編集)『決別!日本の病根』(アスコム、2011)に拠る。

 【参考】古賀茂明に関する記事一覧
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