既に時事ネタとして消費し尽くされた感のある「電車男」。しかしこの物語には、味わうべき点がもっともっとあったと思う。
……「この1冊」ではもうおなじみの『2ちゃんねる』から発生した純愛物語。ああもう既に二律背反だ。鬼畜“2ちゃんねる”の“純愛物語”だぁ?
秋葉系とよばれるイケてないヲタク男が、偶然まきこまれた電車内のトラブルで知り合った女性とのやりとりを“お互いのつらさを舐め合おう”的なスレッドに書き込みした。参加していた住人たち(この辺、2ちゃんねる語が多くてすみません)は彼の悩みに答え、叱咤し、そしてチャチャを入れる。
彼女にプレゼントされたティーカップのロゴが読めず「HERMESって書いてあるけど、どこの食器メーカーだろ」(おかげで彼女は後にエルメスさんと呼ばれることになる)などと徹底的に洗練とは対極にいた電車男は、みんなの応援を背に勇気をふりしぼり、恋愛というステージに躍り出る……
なぜこの本がここまで支持されたかはよくわかる。こーんな普通の恋愛話をこそ、みんな聞きたかったのだ。彼女に電話するべきかドキドキし、デートにどんな服を着ていけばいいか悩みまくり、そしてどんなときにキスを……おぼえがあるじゃないですか。その記憶と困惑を追体験できるのだ。そしてそれ以上に、電車男とエルメスさんのお互いを思いやる気持ちが泣かせる。その善なる思いが、しかし鬼畜なチャットサイトに花咲くあたりがいかにも現代なのだが。
※しかしこの物語、「好きって言ったらもっと好きになっちゃいましたw」他エルメスさん名セリフ満載。感情移入しやすいようにちゃんとできているのだ。わたしは全肯定する。
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