事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

華麗なる一族 第二夜

2008-07-29 | 芸能ネタ

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 この物語のモデルになったのは、1965年の山陽特殊製鋼倒産事件。そして神戸銀行と協和銀行の合併の“”だ。「小(万俵家の阪神銀行→神戸銀行がモデル)が大(大同銀行→協和銀行がモデル)を喰う」という万俵大介の野望が、留守中に妻を実父に強姦されてしまった悔しさの裏返しだった……このあたりがテーマだろうか。一方、祖父とうりふたつである息子の鉄平は、阪神特殊鋼の技術者であり、自前の高炉の建設に情熱を燃やす。どう見ても大介が悪玉で鉄平は善玉。

 でも中年になったわたしは考えこんだ。「華麗なる一族」は、不道徳な装飾を排除して考えるといかにもストレートなビジネスドラマ。その観点で見ると、経営者としての万俵大介、けっこうやり手なのである。上位行である大同銀行(頭取は日銀関係者を迎えることが慣例になっているようなお公家さん銀行)を、弱みにつけこんで合併してしまおう……原作が発表された70年代においては銀行再編は確かに“とんでもないこと”だった。’71年の第一勧業銀行(第一銀行+日本勧業銀行)発足時の大騒ぎは、子どもだったわたしですら「こりゃーえらいこっちゃ」とおぼえているくらい。でも、現在はどうだろう。都市銀行で十年前と同じ名前の銀行などありはしない。だからこそ万俵大介の先見性は際立つ。喰った方と喰われた方の合併後の処遇に天地の差があることは有名な話だし。

 それにくらべると息子の方は全然ダメ。父親に反発しながらも、結局はメインバンクである『父親の銀行』に寄りかかり、過剰設備投資のリスクを怖れた(不義の子であるかもしれない息子への意地悪と描写されるが)融資カットにあわてふためき、従業員を路頭に迷わせる結果を招く。“人柄と情熱に惚れて”過剰な融資を行って経営を傾かせる大同銀行の頭取とともに、要するに無能なのである。情熱あふれる若さを誇り、誰からも(父親以外から)愛された好漢は、その経営能力だけは“真の父親”から受け継ぐことはなかったわけだ。

 まあ、大介にしても娘婿である大蔵官僚によって将来“喰われる”ことになりそうだし、“あの事件”が起こるまで血液型もチェックしないなんて、よく考えると無能をさらけだしているんだけどさ。京マチ子の悪女っぷりと、無垢であるがゆえに残酷な本妻役の月丘夢路だけでも一見の価値あり。ぜひ。

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