事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「スリーピング・ドール」The Sleeping Doll ジェフリー・ディーヴァー著 文藝春秋

2009-06-23 | ミステリ

Sleepingdoll キャサリン・ダンス―カリフォルニア州捜査局捜査官。人間の所作や表情を読み解く「キネシクス」分析の天才。いかなる嘘も、彼女の眼を逃れることはできない。

ある一家を惨殺したカルト指導者ダニエル・ペルが、脱獄、逃走した!捜索チームの指揮をとるのはキャサリン・ダンス捜査官。だが、狡知な頭脳を持つペルは大胆に周到に裏をかき、捜査の手を逃れつづける。鍵を握るのは惨殺事件の唯一の生き残りの少女テレサ。事件について何か秘密を隠しているらしきテレサの心を開かせることができるのは、尋問の天才ダンスしかいない…。

嘘を見破る天才ダンスVS他人をコントロールする天才ペルの頭脳戦。「言葉」を武器に悪と戦うキャサリン・ダンスの活躍を描くジェフリー・ディーヴァーの最新作。ドンデン返しの魔術師の超絶技巧がまたも冴えわたる。
(「BOOK」データベースより)

ディーヴァーを長いこと読み続けると、そろそろひっかけ方に慣れてくる。迫り来る災厄を読者に予感させておいて、次の章の冒頭でひっかけのネタばらし。基本的にディーヴァーらしさとはこの連続だ。

くわえて、おそらくはかなり優秀なスタッフをかかえて綿密な下調べをしているに違いなく、作中に出てこない膨大なデータの蓄積を感じさせもする。リンカーン・ライムとアメリアの特別出演が、事件の捜査にもっと有機的にかかわっていたらもっと面白かったろう。「ウォッチメイカー」においてキャサリン・ダンスはあれほど貢献したのだし。

人間の行動からその心理を読み取るキネシクスが、現実の犯罪捜査でどれだけ重きをおかれているかはわからない。でも小説のネタとしては抜群。だって登場人物の心理を、主人公キャサリン・ダンス(ということはつまりディーヴァー)の断定口調で描くことができるのだから自由自在。強引、ともいえるか。

テクニックとして心理を読み取ることに習熟したキャサリン・ダンスと、動物的本能で他人の心を“読み”“あやつる”ペルの激突は読み応えがあり、特にペルの悪辣さは魅力的ですらある。しかしその悪役が実は……

毎度おなじみラストのどんでん返しは今回も決まっている。真の意味での「眠れる人形」とは誰なのか、そしてその人形が目覚める感動。このひっかけだけはわたしも予想できなかった。

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