“マン好き”第一弾は、実は「バガボンド」を予定していたんだけれど、あの傑作を考えるには、どうしてもその前に「SLAM DUNK」にふれないわけにはいかないようだ。
この、それまで少年マンガでは禁忌とされていた(ことごとく人気を得ることができなかった)バスケットボールを扱った井上雄彦の出世作は、少年ジャンプの1990年42号から連載が開始されている。
その頃のジャンプは、創刊以来何度かあった黄金時代のうち、おそらくは最後にして最高の“黄昏の最後の輝き”を迎えようとしていた。屋台骨を支えていたのは何といっても鳥山明の「ドラゴンボールZ」。でも内実は、読者の人気投票では圧倒的に支持されていたものの、ジャンプらしい勝負の連続に疲れ果てた鳥山は連載の終了を編集部に訴えていたのだ。おかげで苦しまぎれに“フュージョン”というとんでもないアイデアが生まれたりもしたのだが。そして1995年新年号では653万部という、もう今では考えられないような発行部数を誇ることになる。なにしろ「ドラゴンボールZ」と「幽遊白書」そして「SLAM DUNK」が同時進行していたのだ。そりゃ、売れるよな。
でも、わたしはこの時代のジャンプはどうも好きになれなかった。「友情・努力・勝利」という集英社が掲げた少年ジャンプのスローガンとは裏腹に、刹那的なバトルと、そしてこの時期に隆盛を誇っていたヤンキー漫画(「ろくでなしブルース」とか)がどうにも体質に合わなくて。まあそのとぼけたヤンキーぶりが「ビー・バップ・ハイスクール」ぐらいのレベルまで到達していればまだしも。
「SLAM DUNK」も、連載当初はそんなビー・バップの出来の悪いフォロワーに見えた。今となっては信じられないぐらいに井上の絵は下手くそだったし、なにしろ1号1号ほとんどドラマが進行しないのだ。
そう、この漫画の最大の特徴は、その展開のペースの遅さにある。なにしろ6年間に及ぶ連載のなかで、湘北高校バスケットボール部のドラマはわずか4ヶ月しか進まなかったのだ……
以下次号。
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