第3話「笑える死体」はこちら。
時系列では古畑初登場になるはずだった回。田村正和に最初に持参した脚本は第2話「動く死体」だし、撮影の最初は第3話「笑える死体」。
初回の「死者からの伝言」は「殺しのファックス」よりもあとの事件なので、遅筆で有名な三谷幸喜も、かなりのストックを用意してオンエアにそなえたことがわかる。
今回の犯人は笑福亭鶴瓶演じる推理作家。妻の誘拐事件を自作自演する知能犯。タイトルが示すようにファックスが事件の鍵になっている。
放映された94年当時、メールで送稿する作家は少数だったろう。多くは自筆原稿を編集者が受け取る昔ながらのスタイルか、ワードプロセッサーでプリントアウトしてファックスで送るパターンだったはず(今でもけっこういるらしい)。三谷がこのトリックを思いついたのもそんな背景があったのだろう。
完全に見えた計画が破綻したのは、誘拐犯からのファックスが“行頭に句読点がこないようになっている”と古畑が喝破したことによる(笑)。
このあたり、三谷の『ミステリを書く作家の犯罪を書く』喜びが爆発しているかのようだ。当時のワープロの限界も思い出せて笑える。ファックスのピー音も重要なポイント。三谷はファックスオタクかよ。
さて、本来の古畑初登場のシーンは田村正和の千両役者ぶりがきわだっている。
犯人からのファックスに右往左往する峰岸徹(合掌)らを尻目に、ソファで悠然としている後ろ姿!あの後ろ髪だけで誰でも田村だと判別できるあたりがスターですわね。ま、誘拐事件の捜査に殺人課の警部補が最初からタッチするかは微妙でしょうが。
鶴瓶は、ベストセラー作家の傲岸さと、計画が破綻してあせりまくる小心さが共存している感じがいい。むしろぶきっちょな役者だからこそ狂気を感じる。
東京タワーを背に芝公園で仁王立ちして、まるで事件を楽しんでいるかのような表情は絶妙。そしてラスト、西村雅彦のコスチュームプレイには爆笑させていただきました。そう来たかぁ……。
第5話「汚れた王将」につづく。
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