事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「涙香迷宮」 竹本健治著 講談社

2018-02-13 | ミステリ

「このミステリーがすごい!2017」のベストワン。このミスのランキングは本格偏重なので、なるほど文字どおりのパズラーは高得点。現実の殺人事件などほとんどどうでもよくて(笑)、黒岩涙香の遺した暗号に登場人物たちは淫している。それは読者も同様。

「噫無情」「巌窟王」など、英語力をいかして海外の小説を翻訳、いや翻案した黒岩の本領は、「萬朝報」のジャーナリストというより、徹底してマニアな人だったこと。連珠、ビリヤード、いろは歌、都々逸などは、この人が熱中したことでこの国で確立したプレイなのだという。五目並べをわたしたちが楽しむことができるのはこの人のおかげだったのだ!

幸徳秋水との関係がラストで問いかけられるんだけど、あなたわかりました?わたしは全然。ストーリーとリンクしてたのかな。

竹本健治の作品を読むのは久しぶり。ひょっとして名作「匣の中の失楽」以来だろうか。わたし、あれを幻影城バージョンで読んだのが自慢。密室をめぐるほとんど神学論争に驚喜したものでした。

あれを22才で書いてしまったのは、作家として幸せなことだったんだろうか……というよけいな忖度をこの作品で吹き飛ばしたわけだ。

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