一発屋という呼称に、侮蔑の色合いはむかしより薄れていると思う。少なくとも彼らは世間を(短い間ではあるにしろ)席巻したわけだし、それだけでも素晴らしいことではないかと思う。客の側が上から目線で芸人を語る風潮は、どうにもやりきれないものがあった。
髭男爵のつっこみ役、山田ルイ53世が「新潮45」に連載したコラムをまとめたこの本は、一時期の頂から落ちた一発屋たちのその後が語られていて、これがもうむやみに面白いのだ。
登場するのはレイザーラモンHG、コウメ太夫、テツ and トモ、ジョイマン、ムーディ勝山、天津・木村、波田陽区、ハローケイスケ、とにかく明るい安村、キンタロー、そして髭男爵だが、それぞれについての山田の考察が鋭すぎる。
テツ and トモについては、地方営業を、つまりはドサ回りを活動の中心にしているのに身を落とした感がないのは、彼らの本質が演歌歌手だからと喝破したのにはうなったし、波田陽区が面白かった時期はなかった(笑)というのは自らも芸人だから言える話だろう。
「エンタの神様」や「爆笑!レッドカーペット」が高視聴率だったときは、ネタ芸人たちは数多く生まれ、そして消費されていった(安村のようにスキャンダルで消えていく例もあるとはいえ)。それでも現在、彼らは一発屋という称号を糧に、しっかりと生きている。
ダンディ坂野など、「ゲッツ!」ひとつで次々にCMが舞い込んでいる現状には、客の側の成熟を信じてみたくなるというものではないか。
それに、一発屋という存在のおかげで、こんなに面白い書と有能な書き手が顕在化したわけだ。ありがたいありがたい。第24回雑誌ジャーナリズム賞作品賞受賞。プロが、編集者が絶讃した本です。ルネッサーンス!(復活、の意)
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