事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

生け贄

2007-07-02 | 国際・政治

Abekoizumi 今日はちょっと一年以上も前のネタを再録。
状況は果てしなく似通っているので。

……高い塀の向こうは騒然としている。群衆が押しかけ、口々に何か 叫んでいる。

「彼らは何を求めているんです?」
そばにいる白衣の男に、ベッドに横たわるわたしはたずねる。
「ああ、君は知らなかったのか。残念ながら『君を殺せ』と言っているんだろう」
「わたしを?なぜ」
「君がこの施設にいるのは、君のその身体の秘密のためだ。君の体質にはこの世界の食糧事情を一気に改善できる秘密がかくされているらしい。」
「それで、なぜ殺せと」

「殺して、解剖しろということかな。」
「……ふむ。では、どうしてあなた方はわたしを殺さないんです?」
「もちろん、即刻解剖して数多くの飢えた国民を救えという議論もあった。だが、よく考えてみたまえ。生きている人間を犠牲にして得た情報で世界が救えたとして……君は、その世界に住みたいか?」

星新一のショートショートを再現。もうなんというタイトルだったか忘れたし、どの文庫に入っているかも失念。内容にしても、若い頃に読んだものだからかなり美化しているんだろう。左翼であるわたし(笑)のことだからちょっとバイアスがかかっているかも。

ブラックで厭世的な著作が多かった星新一にしては理想主義的すぎるし、狷介な性格で、斜にかまえて世の中を見るあたりが彼の本領だったから(酒席での星新一のトークは絶対に世間に公表できない、と筒井康隆はコメントしていた)、今読むと全然違うストーリーだってこともありうる。

ま、それはともかくわたしが今回言いたいのは、ライブドアや耐震強度偽装問題でゆれる日本って、「住みたい世界」になり得ているのか、だ。極端な拝金主義が生む「勝ち組」と「負け組」への二極分化は、圧倒的多数の犠牲の上にかろうじて成立する少数の幸福を希求しているにすぎない。およそ「勝ち組」がその犠牲の存在を“当然のこと”ととらえているであろうあたりがこの国の不幸なのだと思う。

わたしは今、この国が嫌いだ。

……明日は星新一を特集します。

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