2005年11月25日付事務職員部報。
タイトルは「順風・逆風」です。
11月に入って義務教育費問題はますます緊迫しています。すでにお伝えしたように1日にはホテルニューオータニで教育関係22団体主催の集会があり、これも先日載せましたが前日に就任したばかりの小坂文科大臣は
「中教審答申を真摯(しんし)に受け止め、国民の声、地方の皆さんの声に耳を傾け、国の責任を果たすべく全力で取り組みたい」
と発言しています。しかし9日、その舌の根も乾かぬうちにこの大臣は……
「8500億円という(削減の)数字が先に出ており、三位一体改革の全体の数字は、(各省)それぞれの役割分担の中で消化していくことが必要だと思う」
と都道府県の教育長会議で発言。そして会議後に記者団に向けては
「政策的に理屈のつかない削減はできない。(国が2分の1を負担する現行制度の維持を明記した)中教審の答申を真摯(しんし)に受け止めながら、何か落としどころを作らないといけない」
と説明。いやはや忙しいことだ。いったい、彼の本音はどこにあるのでしょう。
これらの優柔不断ととられかねない発言が、なぜ行われるのかをまず考える必要があります。政治家は、“ぶら下がり”と呼ばれる番記者たちの取材に、チョロッとそれまでの建前論以上のネタをばらします。そして報じた記事がどのような反響を呼ぶかで政策の方向性を調整するわけです。官僚が同様の発言をかますのも似たような事情でしょう。これが“リーク”です。
先ほどの文科大臣よりももっと露骨なのが、中川自民党政調会長が毎日新聞などにもらした発言。
「義務教育費国庫負担金の扱いについては、国と地方の役割をどうするか、半年ぐらいかけて議論し、その上で結論を出すべき」
ん?この政調会長は堅持派なのか。どっこいこの人は別の場では地方側が主張する07~09年度の第2期改革を容認する発言をしていて、結局はそのための半年先送りなのかともとれます。しかしおそらくはアドバルーン的要素以上に、自分の派閥の領袖であり、堅持のためには子分である小泉首相とも対決する、と吠えている森喜朗前首相に配慮したものなのではないかと……
義務教育費国庫負担制度堅持に向けた最強の方法がここから透けて見えます。為政者に“この制度の廃止など誰ものぞんでいない”ことを思い知らせてやればいいのです。その意味で、今までにとりくまれた一千万署名(現在までにほぼ700万筆に達した)やハガキ行動は、マスコミの報道姿勢を微妙に変化させたことも含めて、きわめて効果的だったと考えられます。11月9日にはその署名をたずさえて日本PTA全国協議会の赤田会長が首相官邸を訪れていますが、そのときの官房副長官の反応がわかりやすい。
「三週間でこれだけの署名が集まったことは、それだけ国民の関心が高いということだと思います」
「三位一体改革も大切だし、義務教育費をしっかり確保することも重要だと認識しています。小泉首相に、要請の趣旨をしっかりと伝えます」
世間の追い風を一身に受け、ゴーマンになっている小泉内閣こそ“逆風”に弱い存在です。これほど世論を気にする首相も珍しいでしょう。もっと風を!
※今から考えると、小泉純一郎という人は、要するに教育問題なんかに興味がなかったのだと理解できる。彼が好きなのは“郵政民営化”という、思えばさして重要でもない問題で“旋風”を巻きおこすことだけだったはず。あ、あとはプレスリーのマネ。
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