事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「類」 朝井まかて著 集英社

2021-05-23 | 本と雑誌

ひょっとしたら友だちになれたかもしれない、と主人公の類(ルイ)のことを思う。生活力がなく、常にだれかに依拠し、しかし詩心を失わない……文学者として名を成すよりも、ひたすら静かに生きていたいと願った男。

しかし彼は、森鴎外の息子という、逃れられない宿命を背負ってもいた。

長男の於菟、長女の茉莉、次女の杏奴のいずれも著作家として名を成している森一族もすごいが、出来の悪い末っ子が次第に生きていく術を身につけていく(非常に遅くはあるけれど)過程は読みごたえがある。

森茉莉が週刊新潮にテレビ評を連載していたのはわたしもリアルタイムに覚えているので(同学年である朝井まかてにとってもそれは同様だろう)、この長大な末っ子の物語はついこの間のことのように思える。鴎外、意外に近年の人だったのかも。文豪だけど。

にしても鴎外のネーミングセンスはすごい。オットー、フリッツ(次男で早世した不律)、マリー、アンヌ、ルイである。令和の世ならきっとキラキラネームをつけたんじゃないかしら。文豪だけど。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「鳥獣戯画」講談社 「日本蒙... | トップ | 青天を衝け 第十五回 篤太... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

本と雑誌」カテゴリの最新記事