事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「1985年のクラッシュ・ギャルズ」 柳澤健著 文春文庫

2014-06-18 | スポーツ

Img_24981_61381064_0 井田真木子の「プロレス少女伝説」は名著だった。神取忍という絶対的存在を柱に、長与千種とついにマッチメイクできなかった無念がひしひしと伝わり、所詮は色物だと女子プロレスをバカにしていた(「なんでフジテレビは60分3本勝負を30分番組でやるのを不安に思わないんだ?」)わたしは、あの本のおかげで女子プロを見直したのだった。

前にも紹介したように、「プロレス少女伝説」で井田は大宅壮一ノンフィクション賞を受賞したのだけれど、選考委員でそれに反対したのが立花隆だった。「もっと採りあげるべき大きな対象はあるだろう」と。44才で早逝した井田は、以降も“小さい”対象を深く掘り下げることで立花を見返しているように思える。

「1985年のクラッシュ・ギャルズ」は、その井田作品を強烈に意識した内容になっている。著したのは「1976年のアントニオ猪木」で、なぜその年に猪木はガチンコの勝負をつづけ、そして陰惨な結果を招いたかを描いた柳澤健。というか、小説すばるに「1974年のサマークリスマス 林美雄とパックインミュージックの時代」を連載している人です。なんとわたしも登場するので読んでね(笑)

という次第なので柳澤さん(急に敬称をつけています)の本なら買わねばなるまいとさっそく購入。とてつもなく面白い本だった。

クラッシュ・ギャルズのふたり、長与千種とライオネス飛鳥の対比がまずすばらしい。めぐまれた体格と運動神経をもつ飛鳥が、しかし“見せる”ことに意識的な長与に人気の面で圧倒され、壊れていく過程は読ませる。飛鳥はその後、某女性ロックミュージシャンに入れ込み、なおも堕ちていく。わたし、このミュージシャンがわりと好きだったので複雑。

それにしても、女子プロレスの世界が強烈に旧弊なのにはたまげる。特に全日本女子プロレスという会社。

松永兄弟の完全な同族会社で、彼ら兄弟の意向には絶対に逆らえず、また、松永兄弟自身も“興行”は知悉していても“経営”はできず、ビューティペア、クラッシュ・ギャルズ以降はスターを生み出せないままに倒産したあたりは、女子プロの体質をよくあらわしていると言えるだろうか。

しかしこの本でもっとも感得できるのは、十代の少女にとって、女子プロレスにかぎらず、なにかしら熱狂する対象が必要なのだなということだ。その意味で、いつかまた女子プロレスは復活する日が来るだろうと予感させる。

1985年のクラッシュ・ギャルズ (文春文庫) 1985年のクラッシュ・ギャルズ (文春文庫)
価格:¥ 648(税込)
発売日:2014-03-07
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