事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「底惚れ」青山文平著 徳間書店

2022-04-04 | 本と雑誌

おっと青山文平の新作が出てたのか。さっさと読み始める。

…………あれ?わたしはこの小説を読んでるぞ。単に改題しただけなのかな。

小藩の先代の殿様(と言っても21才)の屋敷に一季奉公をつづける主人公は、未来になんの展望も持っていない。そんな彼がご老公(くどいようだけど21才)の手が付いた女中を実家に送り届けることになり……

そうだよ「江戸染まぬ」じゃないか。あの切れ味鋭いラストはよく覚えている。しかしあれは短篇だったのに、この小説は以降もつづく。おそらく、登場人物たちに青山はまだ思い入れがあり、長篇化したというところなのだろう。

命拾いをした主人公が、魅力的な人物たちと出会いながら、その女中に会うために苦労を重ね、商売人として成長していく。

そして、最後の最後に誰が誰に「底惚れ」しているかが判明し……あいかわらずシャープな文体。そして男の熱情を描いて飽きさせない。“次の志水辰夫”の域を超え始めている。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 鎌倉殿の13人 第13回 「幼... | トップ | 勝手に人生相談Vol.58「古傷」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

本と雑誌」カテゴリの最新記事