事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

あの頃ペニー・レインと

2008-01-04 | 洋画

Almostfros  どうしても観る気にならない映画ってないだろうか。封切りで二の足を踏み、ビデオになってもなかなか借りられず、借りてもそのまま返してしまう……「恋に落ちたシェイクスピア」がそうだったし、「ロード・トゥ・パーディション」が今のところそんな映画だ。この「あの頃ペニーレインと」もそんな感じだった。

観れば、いい映画であることは歴然である。70年代のロックが満載で、少年の成長物語で、おまけに監督はキャメロン・クロウ(「ザ・エージェント」「バニラ・スカイ」の監督、そして物書きの前歴をいかして「ワイルダーならどうする?」の著者)である。どう考えても私のストライクゾーンど真ん中。こんなもん観なきゃ嘘だ。嘘なんだけど、なぜかDVDをケースから出すことがなかった。
これはわたしの性格に由来する。

“たとえ好きで好きで好きで仕方のない”女と会うときでも、あるいは“その飲みが楽しみで楽しみで楽しみで”いるときでも、わたしはその場所へ向かうとき、ちょっと億劫になる。
変な理屈をつけるつもりはない。たとえば、楽しみにしているだけ失望へのおそれが……
とか、過剰な期待を戒めるための不随意運動だとか(笑)。

どんな人もそんなパターンなのかは知らないけれど、この映画はそんな好きな女や楽しみな飲みに近い感じか。でも、やっぱり好きな女とは会ってみるべきだし、楽しみな飲みでは吐くまで飲むべきだ。最高の映画だった。

ストーリーは、“飛び級”までするような秀才少年が(インテリのお母さんが余計なマネをしたわけね)、姉の影響でロックに目覚め、ローリングストーン誌の金で新進バンドのツアーにライターとして随行し、バンドとグルーピー、そして少年すべてが成長していくというお話。クロウの自伝でもある。

Cast2 まずこのお母さん役のフランシス・マクドーマンドが素晴らしい。「ファーゴ」の妊娠している保安官役も良かったが、ロックンロールがセックスとドラッグにまみれているという偏見に凝り固まりながら(それはある意味正解なのだが)、しかし息子をどこかで手放さなければならないことに薄々感づいている未亡人、こんな難役を軽々とこなしている。

そして、なにより音楽!
映画のようにキャメロン・クロウがロックライターだった関係で、彼のまわりにはロック関係者が多い。バンドの指導はなんと親友のピーター・フランプトンがやったようだし(エンド・タイトルで彼の名を見つけてびっくり。「フランプトン・カムズ・アライブ」のライナーはクロウが書いたとか)、何よりもクロウの奥さんはハートのナンシー・ウィルソンなのだそうだ。いやーこれも驚き。ちなみにこのハート、レッド・ツェッペリンをリスペクトするハードロックバンドなのだが、姉妹がツインボーカルをとっているのだけれど、わたしも演歌っぽい姉のアンより「These Dreams」のナンシーの方が好きざんす。趣味いいぞクロウ

演出もみごとだ。グルーピーたちに童貞を切られた少年が感ずる、静かな朝のとまどいなど、すべての男たちが覚えのある“あの感じ”が品良く描かれている。
そして、有名人とつきあうことでしかアイデンティティが保てないグルーピー、ペニーレイン(演ずるケイト・ハドソンはゴールディ・ホーンの娘)が哀しい。彼女の本名があかされるシーンと、空港での別れの哀切さは必見。サウンドトラックを買うようなつもりで、このDVD、買っちゃおうかな。

Stroyimg1 ※涙ちょちょ切れの曲目は以下のとおり。
"America" Simon & Garfunkel
"Sparks" The Who
"It Wouldn't Have Made Any Difference" Todd Rundgren
"I've Seen All Good People:Your Move" Yes
"Feel Flows" The Beach Boys
"Fever Dog" Stillwater
"Every Picture Tells A Story" Rod Stewart
"Mr. Farmer" The Seeds
"One Way Out" The Allman Brothers Band
"Simple Man" Lynyrd Skynyrd
"That's The Way" Led Zeppelin
"Tiny Dancer" Elton John
"Lucky Trumble" Nancy Wilson
"I'm Waiting For The Man" David Bowie
"The Wind" Cat Stevens
"Slip Away" Clarence Catter
"Something In The Air" Thunderclap Newman

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