うろたえた。
なんで今、オレはこんな普通の場面で涙を流してるんだ?と。
……原題はMy Big Fat Greek Wedding。わたしのすんげー大げさなギリシャ風結婚。強引に日本人にあてはめると、成城あたりのインテリがこてこての関西人に婿入りする顛末か。こちらは人種問題もからんでもっとハードだが。
平日の午後、客席にはわずか4人。わたしの前には外人の若い女性が座り、んもう最初っから最後まで笑いっぱなしだった。彼女の下品な笑い方で思う。またしても強引に日本にあてはめると、この映画、肌合いとしては寅さんに近いのではないかと。予定調和なストーリー、ひねりのないギャグ、騒々しい登場人物たち……山田洋次の映画は日本映画を10年は後退させた、と常々広言してはばからないわたしだが、しかし予想どおりのハッピーエンドに涙しながら、こんな映画には近頃めったにお目にかかれないことに気づく。一目惚れした相手から目が離せなかったり、なかなかやらせてくれない女にいらだったり、いつも不機嫌な祖母(いまだにギリシャとトルコが交戦状態にあると思っているあたりが笑える)が、結婚を控えた孫娘に見せる笑顔……日本映画がすでに放棄した「普通の恋愛」を、ここまで堂々と描くか。
この、松竹製かと思えるようなコメディを、配給会社の戦略にのって若い女性たちだけのものにするのは惜しい。盆と正月に寅さんを待っていたような層こそ、全米で2億ドルも稼いだ原動力だったはず。その力を見抜いた製作のトム・ハンクス夫妻も鋭い。ぜひ観て。こんな機会でもなければ、ギリシャ正教の結婚式なんて一生見れないよ!
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