時代は徳川幕府の体制が盤石となった頃。中国も清の康煕帝の頃だから両国ともに絶好調。その間にはさまれた李氏朝鮮は、だから外向的な手練手管が必要とされていた。
もっとしんどかったのは日朝間の微妙なやりとりを仲介しなければならなかった対馬藩。逆に言うと、さして作物にめぐまれない対馬にとって、朝鮮との交流こそが生命線だったわけ。そんなとき、新井白石が通信使のあつかいを改めるとしたことで事件が起こる。
富山での研修会に出たとき、ある画像が示された。朝鮮半島の側から日本を客体化して見れるように、位置が逆転しているやつ。
ちょっと息を呑む。いかに朝鮮と九州が近いかが歴然。ましてや対馬と朝鮮は……
その事件を契機に、朝鮮人として生きることになった主人公は、微妙なバランスを保たなければならない日朝史を象徴している。
日本は朝鮮の向こうに中国を見ているし、朝鮮は中華意識のかたまりで、辺境に位置する日本を露骨に侮蔑している上に、秀吉の朝鮮出兵を忘れてはいない。
それでもなお、衝突しながらもお互いを激しく必要とすることは、この冒険小説(ですよ無理にカテゴライズすれば)と、逆転した地図でよく理解できる。
「柳生薔薇剣」につづく。
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