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事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「成瀬は天下を取りにいく」宮島未奈著 新潮社

2025-02-22 | 本と雑誌

2024年の本屋大賞は、津村記久子の「水車小屋のネネ」で決まりだと思っていた。文句なくわたしのベストワンだったし、それどころかあれを上回るのは(わたしにとっては)長嶋有の諸作ぐらいだ。

しかし結果はこの「成瀬は天下を取りにいく」が受賞(ネネは2位)。

全国の書店員が選択したこの作品は、いったいどんなものなのだろう。

「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」

ものすごくいなせな成瀬あかりのセリフからこの物語は始まる。この西武というのはライオンズのことではなくて、まもなく閉店する西武百貨店大津店のことだ。

そこへ14才の成瀬は毎日通い、ローカルテレビ局の番組生中継に映りこむと宣言したわけ。

テレビ局の反応が笑える。なんかめんどくさそうな子だな、と完全にスルーしてしまうのである。

そう。よく考えれば(考えなくても)成瀬はめんどくさい。しかし、同時にいなせでもある。

おそらくは作者自身が投影された主人公のことを、普通の小説であれば男子を名字、女子を名前で表記するのが暗黙のルールだが、この作品では徹底して「成瀬」で通している。

そしてそんな成瀬のことを、読者はみんな好きになったのであり、本屋大賞はその証だ。

書店の求めになかなか応ぜず、増刷をためらいがちなので有名な新潮社。実はもっともっと売ることができたんじゃないの?


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