一種の化け物でもあった杉村春子については、もう少しつっこんだルポが出てくる頃合いだと思う。生前の彼女に斬り込んだ二冊のノンフィクションの面白さからみても、杉村の女の一生には、まだまだ底知れない闇と栄光があるような気がするのだ。
「女優 杉村春子」大笹吉雄著 集英社
毀誉褒貶の激しい、しかし演技のうまさでは文句なく日本一の女優に、このインタビュアーはみごとに切り込んでいる。インタビュイーの質に負けていないのだ。てんこ盛りエピソードの女臭さにびっくり。
「杉村春子 女優として 女として」中丸美繪著 文藝春秋
三人の夫以外のもうひとりの男の存在。文学座が杉村春子一座であることに我慢できずに飛び出していった多くの俳優たちにとって、彼女の存在が耐えきれなかったように、杉村にとっても(彼らの存在が)耐えられなかったとする現実は怖い。太地喜和子の死を、本音のところで彼女はどう考えていたのだろう。
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