事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「日本のいちばん長い日」(2015 松竹=アスミック・エース)

2015-08-18 | 邦画

1945年(昭和二十年)8月のお話。

日本の役者は、軍人と娼婦を演じさせたらうまいと言われている。1967年の岡本喜八監督版「日本のいちばん長い日」(東宝)においては、畑中健二少佐を演じた黒沢年男の狂気の演技がすごかった。

喜八さんは、とにかく太平洋戦争に怒りまくっていた人なので、戦争続行を唱える若き陸軍のはねっ返りたちを、あまりにも高いテンションで描くことによって、表現は変だけれども「相対化」したかったのだと思う。あなたたちは歴史的には間違っていると。

しかし、クーデターを目論む彼らと、軍国主義者としての阿南惟畿(あなみこれちか)陸軍大臣(三船敏郎)が魅力的なのは確かだった。モノクロの画面とあいまって、とにかく熱い。

それでは2015年の原田眞人バージョンはどうだったろう。8月14日の夜から15日の朝にいたるまでの温度は、確実に5℃は下がっている。

だから魅力がないと言っているんじゃないんです。前から「司馬遼太郎原作の歴史劇を撮りたい」としていた原田のことだから、鳥瞰図的に冷静な物語をつむいで見せたかったのだと思う。

そしてその意図は完全に達成された。

これも誤解される言い方かもしれないが、とにかくこの作品はむちゃくちゃに面白いのだ。政治劇として、そして映画として。シーンとシーン、カットとカットのつなぎが絶妙なので、物語のうねりが観客にびんびん伝わってくる。

同じ原田監督の「駆込み女と駆出し男」公開からわずか三ヶ月、ひょっとすると今年のベストテンのワンツーフィニッシュだってありうるかもしれない。ま、評論家受けのよくない原田だから(なにしろ彼自身が映画評論家だったから)ないとは思いますが(笑)、それくらい現在の原田眞人は円熟している。以下次号

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