小林信彦お得意の、“業界を漂う男”の物語。加えて、谷崎潤一郎直系の人だから、異常性愛のファクターも仕込んである……というよりこちらがメインのお話なのだが。
主人公は、ある事情があって42才になる今も女性と性交渉をもつことができない。その原因は子どものころに読んだ性医学の書にある。よくよく考えると「42才の童貞男」があたふたするのだから、スティーブ・キャレルが演じてもいいようなストーリーだ。
しかし小林のことだから、他人の心根を過剰に読んでしまい、自らを痛めつけてしまう主人公にするなど、タッチは陰鬱。
衰退する映画界、自分の知らないうちに芸術と化していたアニメなど、業界の浮沈を人間の消長にシンクロさせるあたり、芸が細かい。おそらくは日本文学史上最高齢のヰタ・セクスアリス。自信ないけど。
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