その事件のスタートは84年。発端から、謎に満ちたものだった。
・1984年3月18日。名前を聞けば誰でも知っている製菓会社の社長が、入浴中に全裸で誘拐される。
・会社に身代金として現金十億と金塊100キロが要求される。
・しかし指定された場所に犯人はあらわれず、社長はなぜか解放される。
・犯人はマスコミに「かい人21面相」と名乗り、青酸入りのお菓子をばらまくと宣言。
……これが、いわゆる「グリコ・森永事件」のオープニングだ。犯人の目標は当初のグリコから丸大食品、森永製菓、ハウス食品へと展開し、警察は翻弄され、キツネ目の男が登場し、そして現在に至るも犯人は捕まっていない。
事件当時、わたしはすでに学校事務職員になっていて、日々のマスコミ報道の嵐(まさしく、嵐だった)にほとんど呆然としていた。いったいなんだこれは、と。
若い読者のなかにはご存じない人もいるかもしれない。この事件の特徴は『劇場型犯罪』と語られることでわかるように、マスコミを利用することで、全国民がリアルタイムで進行状況を注視できる点にあった。そして、こどもの好きなお菓子に毒物を仕込むと予告することで、全国民を人質にとった誘拐事件だともいえる。
犯人の才気は、その脅迫状でよく理解できる。
「全国のおかあちゃんえ しょくよくの秋や かしがうまいで
かしやったらなんとゆうても森永やで わしらがとくべつにあじつけたった
青さんソーダのあじついてすこしからくちや
むしばにならへんよってお子たちえこおたりや
からくちのかしどくいりとかいた紙はっている
はかたから東京までの店に20こおいてある
青さん0.2グラムと0.5グラムの2しゅるいある
10日したらどくいりかいとらんのを30こ全国の店におく
そのあともぎょうさんよおいしてるで たのしみにまっとれや
森永乳業はせいかとちがう あんぜんやで
かい人21面相」
PART2につづく。
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