事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

1Q84 BOOK2

2009-08-02 | 本と雑誌

1q84_02 BOOK1はこちら

……くわえて、村上春樹がコネクトした地下鉄サリン事件への言及がどう行われたかの興味でもひっぱる。「さきがけ」と呼ばれる宗教団体の教祖を、しかし村上は過度におとしめもしないし賞揚もしない。彼のめざした(というよりも追い込まれた)地点は理解不能なものではないし、一度だけ行われる奇跡も、オウム真理教や麻原のありように似て実にしょぼい。それが“現実”だとでも村上はいいたげだ。

 しかしこれだけ面白い小説で、読後にため息をつくほど満足できたとしても(満足しましたとも)、200万部を超えるベストセラーになると誰が想像しただろうか。マスコミが騒ぐように新潮社の(内容を徹底して秘匿した)作戦が奏功したのは確かだし、村上春樹が一種のブランドとして確立していることもあっただろう。作中にしこんであるユーモアも(時に大笑いできるほど)いつもより過剰だ。

 でもよく考えるとかなりエッジのきいたSFだし、周到で残虐なミステリでもあるために拒否反応もあったはず。邪悪な(そして神聖な)七人の小人である『リトル・ピープル』の存在をどう受け取るかについても、決して親切な説明はされていない。それでも、話題が話題を呼んで売れまくっている。不可解なファンタジーみたい。まるで、2009年の日本に、月がふたつ存在するかのよう。つまり、今年が200Q年であるかのように。まあ、「ノルウェイの森」が爆発的に売れたときも不思議な気持ちでいたわけだけれど。

 読みおえて、多くの人が続編を期待する気持ちもわからないではない。あいかわらず不親切な終わり方だしね。でも、青豆と天吾の関係が“片一方が片一方に静かに寄り添う”ふたつの月の存在のような形になることに(ネタバレになるのでこれ以上は言えませんが)、わたしは深く納得した。ひょっとしたら今年のベストかも。ぜひ、ご一読を。あ、こうやって売れていくわけかー。

……そしてなんとBOOK3につづく

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