事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「砂の器」がわからないPART1

2008-10-08 | 映画

「『霧の旗』がわからない」はこちら

B0078675_10295522  まさか今年最初に観る映画が「砂の器」とは思わなかった。イオンシネマがなぜか“イオン名画座”として限定公開してくれたのである。正月映画の不入りが影響したのかも。

今回とりあげるのはもちろん松本清張の原作ではなく、04年に中居正広が主演したテレビドラマでもない。74年に松竹が、脚本山田洋次・橋本忍、監督が野村芳太郎という鉄壁の布陣で製作した超大作。初めて観たのは中学生の時。地元の映画館の二階席で、ボロボロと涙を流しながら観たのを今でも憶えている。三十数年ぶりに再見して、薄汚れた中年男はこの映画をどう感じるのかと思ったら……んもうまたしてもボロ泣き。隣にすわった外人にばれないように、声を殺してハンカチ使い放題。

 問題は、なぜこの映画はこうまで泣かせるのか、だ。検証してみよう。
 ストーリーはこんな感じである。

・昭和46年、蒲田駅操車場で老人の扼殺死体が発見される。
……この老人の容貌はほとんどラストまで明かされない。

・その老人の持っていたマッチから、当夜、あるスナックに彼は若い男とともに訪れていることがわかる。老人は東北弁(らしく聞こえる)訛りで「カメダ」と何度も話していたとホステスたちは証言する。
……「カメダ」は「踊る大捜査線」の劇場版二作目でギャグに使われていた。そのくらい有名なネタだったわけだ。秋田県人の柳葉敏郎が思いきり訛って「かむぇだ」とつぶやくのが笑えた。

・(映画ではこのシーンからスタートする)警視庁捜査一課の今西刑事(丹波哲郎)と西蒲田署の吉村刑事(森田健作)は、「カメダ」が地名ではないかとの憶測をもとに秋田県の亀田を訪れるが、手がかりは得られない。帰路、列車内で和賀英良(加藤剛)という新進気鋭の音楽家と遭遇する。
……羽越線をこの二人は利用する。丹波が「鶴岡のあたりで目が覚めて」と語るので場内に笑いが。原作には酒田も出てくる。

・ある新聞に「紙吹雪の女」と題した紀行文が載る。中央線に乗った若い女性が、窓から紙切れをまいていた、とする記事だった。吉村刑事は「これは紙切れではなくて、返り血を浴びた犯人のシャツを切ったものではないか」と疑い、その女性、理恵子(島田陽子)を訪ねる。しかし彼女は突如失踪してしまう。

……ミステリとしての最大の弱点はここにあると思う。事件解決にある程度の偶然は許容できるだろうが、いくらなんでもこれはきつい。愛人の血染めのシャツを細切れにし、客の多い中央線でばらまく理恵子の不用意さもすごいが、それをたまたま新聞記者が記事にし、たまたま刑事が読んで血痕の残る証拠品ではないかと疑い(無茶だ)、そして吉村の“必死の捜索”でたまたまその布きれが発見されるとは!

PART2につづく。

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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
当然のコメントで失礼いたします。 (佐々木)
2008-10-09 13:37:24
当然のコメントで失礼いたします。
 10月25日から渋谷「ユーロスペース」でレイトロードショーをする映画『ブリュレ』の宣伝スタッフの佐々木といいます。
「ブリュレ」という映画は17歳の双子姉妹が演技初めてですが、ダブル主演をしています。ういういしい双子の表情は批評家からは好評です。
「ブリュレ」公式サイトはこちらです。www.brulee-movie.com
 予告編はユーチューブでも見られます。ので「ブリュレ」で検索して、ご活用して頂ければと思います。
 それで予告編や公式サイトなどを拝見して興味があるならばブログでこんなところが興味がわく(例えば、双子がかわいいとか、映像がきれい)といったような内容を書いてもらいたいです。

 内容が不適切な場合は削除してください。
 長々と失礼いたしました。
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ユーチューブて5年前に既にあったのですね。私は今... (雨止み)
2013-05-11 19:53:39
ユーチューブて5年前に既にあったのですね。私は今年に初めて活用し始めました。「ブリュレ」て「砂の~」と同じ位の評価の作品なのかしら…。
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雨止みさんホンダ車ネタをやってる場合じゃない (hori109)
2013-05-11 20:28:35
雨止みさんホンダ車ネタをやってる場合じゃない
今年初めてYouTubeってのはさすがに……(^_^;)
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ホリさんおはようございます。ユーチューブて便利... (雨止み)
2013-05-12 07:29:39
ホリさんおはようございます。ユーチューブて便利です。映画「砂の~」は劇場やビデオで何度か観たので使わないですが…。次に映像化されるのなら女性キャラに観月ありさちゃんを起用して欲しいです。彼女、ホンダ車に乗ったりしたのかな(笑)。「ブリュレ」「ショコラ」「ジュスイ」…フランス語て英語と違ってお洒落でいいですね(聞き取りにくいし難しいですが…^^;)。ラスコー洞窟の絵まで美しいです。
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今日はわたしの趣味まる出しで小泉今日子です(笑) (hori109)
2013-05-12 22:01:32
今日はわたしの趣味まる出しで小泉今日子です(笑)
斎藤博脚本のときの中原俊監督は無敵ですよっ。
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キョンキョンと中原さんと言えば映画「ボクの女に手... (雨止み)
2013-05-13 06:01:05
キョンキョンと中原さんと言えば映画「ボクの女に手を出すな」(「木枯らしの季節」が主題歌、私は未見どす)を思い出します。キョンキョンてドラマ「あまちゃん」で姿見たのでまだ活躍してる様です。明るい方なので清張物との紐付けが難しいですね。前のプリウスに今でも亀梨君と乗ってはるのかしら(笑)。
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最近知ったのですが、ラストの巡礼の場面の岬の祠... (雨止み)
2014-08-03 19:42:41
最近知ったのですが、ラストの巡礼の場面の岬の祠は作られたセットだそうです。本物だと思いました。すごい仕事師が松竹にいたのですね。先日日本各地で行われた名作話題作のリバイバルリレー上映で「砂の~」が一番の客入りだと聞いたのですが亀仙人を知らなかった私はどう受け止めたらいいのでしょう(笑)。
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もちろん職人がこの時代にまだ存していたということも (hori109)
2014-08-03 20:29:45
もちろん職人がこの時代にまだ存していたということも
あるでしょうが、しかし松竹はこの企画を通すときに
明らかにバクチをうっているんですよね。
それはもうこの時期は寅さん以外の企画にまったく客が
入らず、んもうどうにでもなれって気分があったんだと
思います。
だからこそ、リスキーな企画も通ったし、当時としては
異様なくらいに長い撮影期間が許されたのだとも。
奇跡の作品です。そりゃ、いまでも泣けますよね。
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