作者の深町秋生は、山形県出身(南陽市)、山形県在住(山辺町)、専修大学出身。ここまでかぶってれば応援しなければなりますまい。というか、そんな思い込みも不要なほどこの小説は面白かった。
GHQによる占領下、屈辱的な生活を送る敗戦直後の日本人。そのなかに、米兵を怖れもせずに歯向う荒くれ男がいた。彼は戦中にスパイ狩りの名手として知られていた。そんな彼、永倉を、陸軍中野学校出身で変装の名人である藤江がスカウトする。行く先はCATと呼ばれる得体のしれない組織、フィクサー緒方竹虎(!!)が、憂国の思いで立案したものだった……
誰が読んでも柳広司のD機関シリーズとの類似に気づくはず。どちらも中野学校がモデルなので当然のことなのだろうが、向こうに結城という神(と同時に悪魔)がいれば、こちらには藤江がいて、敵の上の上を行く。
時代設定がいい。焼け野原となった東京と現代の比較だけでも楽しいし、なによりすべてを失いはしたけれども、敗戦の絶望のなかから、しかし復興への意欲をつかみかけている登場人物たちを、誰しもが好きになるはずだ。続編希望。
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